「マジカルハロウィン☆ヤンデレロリコン先生」ってタイトルだけど先生不在
私が聞いた話によると、刺客は三人くらいいる。
元は白菊さんが先生を連れ戻すために派遣したらしいけれど、止めようとして連絡したら音信不通になっていた。当の白菊さんはというと。
「これは……何という料理ですの?」
「鮭のムニエル、です……初めて作ったんですけど」
「ムニエル! 天使みたいで可愛らしい名前……いただきます」
私に餌付けされている。ここにいれば先生とも会えるので、帰る気は無いそう。こないだ転校の手続きまでしてたような……はた迷惑な一家だ。家長はヤンデレ女子高生、ハロウィン君(誕生日は三十日)やらヤンデレロリコン先生やら、一体どうなってるんだ。みんな病んでるし。
先生の誕生日から一週間以上経ったけれど、特にハロウィン君以外変わったことは無い。
「おねーちゃん、スマホかして」
「はいはい」
一足先に食べ終わった糾子が、私のスマホで先生とメールのやり取りを始める。ここ最近は糾子の日課みたいになっていて、何処で覚えたのか私に見られないようロックを掛けたりし出した。正直不安だ。
「……えへへ」
しきりにスマホの操作音が聞こえる。たまに通知音。
「……あはは!」
「糾子?」
「あっ、ごめんごめん……へへ」
……気に食わない!
「ちょっと貸して」
「ええっ!? おねーちゃん、はなしてっ……ああっ!!」
バキ。
そんな、呆気ない音がした。
スマホ壊れたあああああああ!!
「テッテレーっ、ハロウィン君参上! なになに? 姉妹喧嘩?」
「うっせぇ出てくんな!」
ハロウィン君があれ以来うちに住み着き、空き部屋を丸々異空間に変貌させてしまったのは、今は置いておくとして。
「ウーン、これくらいならボクでも直せるなぁ」
「へ? お前直せんの?」
ハロウィン君はバッキバキのスマホを手に取り、
「マジカルハロウィン☆スマホよ直れ!」
意味不明の呪文を唱えた。
「何それ」
「ボクの万能呪文だよ!」
「んなの効くわけねー……って、ええっ!?」
ハロウィン君の手元には、私のスマホ……なのか? 黒だったのがオレンジ色になってる。
「よっと、起動」
最初のロック画面も暗証番号が「1031」になってるし。
「どう? 可愛いでしょ、大丈夫データは弄ってないから」
「お前の趣味じゃん、ってかすげーなこれ! ホントお前何なの!?」
「はい、糾子ちゃん。メールしてみて」
「うん!」
糾子がアプリを開いて操作し始める。
「……あれ、絵文字がカボチャとコウモリと魔女しか出てこないよ?」
「ハロウィン仕様だからね!」
「あーっ、お兄さんからのメールもハロウィンのデコメになってる」
「ハッハー! 受信した物をハロウィン仕様にする変換機能もつけといたよ」
「うっぜ! 早く私のスマホを元に戻せっ」
「……仕方ないなー」
ハロウィン君がもう一度スマホを手に取る。
「えーと、設定……ハロウィン機能解除っと」
「そこは設定でいじれるのな」
かくして、私のスマホはオレンジ色になった以外元通りになった。
「ハロウィン君がやられたようだな……」
「フフフ……奴は神有月三兄弟の中でも最強……」
「鬼の末裔ごときに負けるとは……まぁ、しょうがないか」
「しょうがなくねーよ! どうするのさ姉貴、ふざけてる場合じゃねーんだぞ!? こんな人の家の部屋まで借りて潜伏してるってのに!」
「案ずるな。私にも策はある」
「何さ」
「あの頭の弱そうな小学生『きゅーこ』を利用するのだ」
一体誰が人気なんだろなこれ。書いてて楽しいのは先生とハロウィン君だけど。




