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ヤンデレロリコン先生と神在月家の一族

私は今、何故か右腕を白菊さん、左腕を先生に枕にされて寝っ転がっている。足には糾子が引っ付いてるし。

「これ、何なんすか先生」

「神在月家に古より伝わる健康祈願です」

「白菊が現当主の神在月家には、鬼の体の一部を枕にして行う儀式があるのです。本家には鬼の腕のミイラがあるのですが、流石に八重さんをバラバラにすることは出来ませんので」

「きゅーこはただ、みんなのまねしてるだけだよ」

「……そろそろ重いんですけど。ってかどうして先生にまで腕枕しなきゃなんないんですか!」


+++


無理矢理に腕枕タイムを終わらせ、私は二人をこたつに招く。もちろん何かあってはいけないので、糾子のことは私がホールドしておく。

「さて、先生。白菊さん。色々と教えていただきたいことがあるんですが」

「僕のスリーサイズですか、喜んで」

「知って何の得があるんだよ死ね!」

「白菊は鼻から血を出して悦に入りますの」

駄目だこいつら。

「私が聞きたいのは! 最近糾子に仇なす『神在月家』なる人々が迷惑なんですけど、一体何の団体なのかってことです」

半ギレで言い放つと、先生が口を開いた。

「……一言で言うなら『由緒正しき十月マニア』集団ですね」

「は? 十月マニア?」

「十月は別名、『神無月』と言いますね。しかし出雲では神が日本全国から集まってくるため『神在月』と言うのです」

「へー、それが?」

「たまたまその名字を名乗った馬鹿先祖のせいで、現代に至っても神在月家は馬鹿みたいな習慣に基づいて生きるのです」

先生は緑茶をすする。

「白菊、僕の代わりに話してください」

「はいな」

白菊さんは学生証を取り出す。開いて見せたのは、県外の知らない学校の物で、生年月日は十月二十四日……あっ。

「子供は十月に生むのが原則ですの」

「えー……そこからかよ」

「守らなければ酷い場合は家を追い出されるのです。結婚相手も十月で、十月になると毎日のように正月並みの豪華な食事が出されますの」

「うへぇ、胃もたれしないの?」

「ええ、不思議なことに、神在月家では滅多に病気にかかる者はおりません。体も健康で……ただし、それは十月生まれに限ってです」

白菊は先生の眼鏡スペアに手を掛け、すっと引き抜いた。

「十一月生まれの霜月兄さんは、本家の者であるにも関わらず、後天的な物を除けば体が弱く、目も悪いのです」

「白菊、ぼくのめがねをかえしてください」

「私にパスして!」

「……うーん……はいな、八重さん」

「喰らえ私のファイヤー眼鏡ストリーム!」

豪速球ならぬ豪速眼鏡を先生の顔に叩きつける。

「ぐあああああ」

「はっはっはー、私のシチューはお前の義妹でさえ屈伏させるんだ! 参ったか!」

「……ふふ、ならばぼくもだまってませんよ」

先生が取り出したのはサーベル。曲がった刃に先生の虚ろな目が映る。

「さあ、ひさびさにきゅーこちゃんをうばいあいましょうか」

「あっ、こら間違えて糾子に刃を向けるな! 早くスペア持ってこいっ」

「……んー、どこでしたっけ……あった」

先生が眼鏡を掛けると同時に、私は先生に掴みかかる。決めるぜブレーンバスター!

「……あの、説明がまだ」

「後で後で!」

複雑そうにもじもじしていた白菊さんが「もうすぐ本家の者が攻めてくるのです」と言ったのを、一瞬私は聞き流しかけた。


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