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6 無論。

 兄貴って嫌なやつ。僕、遂に家族が崩壊したと思って、自分が言った事、凄く気に病んだのに、今更電話掛けて来たりして。

 まあ、悪くはないけど。


 冬の夕方はすぐ真っ暗になって夜色に染まる。電車に乗って外を眺めていると、夜が濃くなっていく様子がよく見えた。窓ガラスに自分の顔が映る。 電車の中の明かりが窓の形をして外に映る。町を後にしてゆく。雪は、降り積もっていく。今日の雪は積雪するようだ。

 あの日を何度思い出しても、よくあの寒い中、僕は日向ちゃんを待っていたなぁ、と自分で感心してしまう。神経麻痺してたのかな。あまり寒かったという記憶はない。雪の中待たせる日向ちゃんも酷いよな。

 あれで良かったけど。


 日向ちゃん、よく僕を見つけてくれたな。

 よく、あんな寒い中、探してくれたな。

 遠くもないけれど、決して近いともいえない場所に、わざわざ寒い雪の夜、来てくれた。

 あの日の事は忘れない。そして、誰にも言わないだろう。僕と日向ちゃんの間で、不思議と暗黙の了解になっている。二人の間で、共通する出来事であれば、それで良い。

 もしあの時、彼女が電話をくれなかったら、来なかったら。何も考えたくないから逃げて、僕も家を出て行くと言っていたかも知れない。お店を、辞めていたかも知れない。覚悟の出来ない、その甘さのせいで。

 

 ポケットの中のスマートフォンが震えた。

 取り出して見ると、新着メールが一件。

 開くと、


 from:葉山日向

 無論。


 と、素っ気ない一言。

 彼女らしい。



 それって、運命共同体じゃない

 ・・・支障あるか

 


 あの時の彼女の表情と、言葉を思い出して、思わず、微笑んだ。


 電車は雪降る町を追い越してゆく。

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