君とあたし4
「おはようって。加奈、もしかして、宮原が来るより前に来て、顔を合わせないようにしているんじゃないの?」
疑わしげに見てくる。
どうして、わかるのだろう。
「…別に、嫌ってはいないよ。宮原、良い奴だし。ただ、困ることがあってね」
仕方ないと思って、答えた。
「困ること?」
オウム返しに、美佐は尋ねてきた。
あたしは声をひそめて、言った。
「その、宮原を見ると、熱が出るんだよね。体が火照るというか」
「うそっ!宮原を見ると、体が火照るって。ちょっと、エッチなことでも考えちゃうとか?」
大きな声を出す美佐に、慌てて、静かにと指を口元に当てる。
「別に、エッチなことは考えたりしてないってば。ただ、体が熱くなるんだよね。火がついたみたいになるっていうか」
よく言葉に言い表せなくて、端的にしか、伝えられない。
もどかしくって、あたしは口をつぐんだ。
美佐には、黙っていてくれるように、頼んでおいた。
教科書などを鞄から出して、机の中に入れておいたのだった。
朝のホームルームが終わり、あたしは次の授業の準備をしていた。
「…樋口。鈴木と仲が良かったよな。もしよかったら、ちょっと、聞いてほしいけとがあるんだけどさ」唐突に、同じクラスの男子から、声をかけられた。
ちなみに、鈴木というのは美佐のことである。
「美佐に訊いてほしいっていわれても。何をきけばいいの?」
あたしは準備を終えて、男子に聞き返した。
すると、男子は言いにくそうにする。
「いや、その。鈴木ってさ、好きな奴っているのかと思って」
ようはそれを訊きたかったのか。
あたしは内心、ため息をつきたくなった。
「それくらい、本人に訊けば?あたしに頼んだって、だめだと思うけど」
冷たくいうと、男子はそこのところ、何とかしてくれと、必死になって、頭を下げてきた。
すると、おしゃべりに興じていた女子や男子、クラスメイトたちがあたしたちを一斉にこちらをちらちらと見てくる。
そんな中、あたしに近づいてくる男子がいた。
茶色の髪を視界に入れて、宮原だとわかった。
男子をまっすぐと見据えている。