未来の君とあたし2
あたしが固まっていると里絵は良かったねと言いながら、先に帰っていった。
その場にはあたしと和人の二人が取り残された。
「…えっ。あたしと結婚?」
「そうだよ。俺、本気だから」
和人は真剣な目でこちらを見てきた。
あたしは握り返された手の温もりで我に返る。
「そ、そう。あたしもいずれはと思っていたけど」
「じゃあ、返事は?」
薄茶色の瞳に見つめられてどきまぎしてしまう。
それでも、うるさく鳴る心臓をなだめながらあたしは答えた。
「…うん。こちらこそよろしくお願いします。あたしと結婚してください」
「ああ、良いよ。その答えをずっと、待っていた」
和人はにこやかに笑いながらあたしの頬に軽くキスをしてきた。
くすぐったくて笑った。
その後、あたしは和人とこじんまりとしたレストランに行き、食事を楽しんだ。数ヶ月後に結婚指輪を買ったり、結納をすませて晴れて、結婚式を地元の式場で挙げた。
入籍もすませていたので問題はなかった。
そして、二十二歳で夫婦になった。
それから、和人はあたしの家に婿養子として入る。
あたしたちは三人の子供をもうけた。
男の子が二人と女の子が一人でとてもにぎやかな家庭になった。
美佐にも彼氏ができたり里絵も狩野先輩とゴールインしたと後で聞いた。
息子は長男が史也といい、和人似のイケメンに育つ。次男は速人といって、顔立ちがあたしに似ている。二人とも腕白である。
下の長女は千夏といい、顔は和人似で性格はあたしに似て、気が強く、繊細だ。
なんだかんだ言って、史也と速人は喧嘩はするけど息が合っている時がある。
「…兄ちゃん。サッカーやろう」
「いいぜ。そのかわり、手加減はしないからな」
「わかったよ。じゃあ、公園行こう」
二人して元気に公園へ行ってしまう。
一番下の娘はあたしから離れず、べったりで甘えたがりだ。
「お母さん、相手して」
「ごめん、後でね」
そう言うとむすっとしてどこかへ行ってしまった。
あたしは心中で謝りながら、それを見送る。
あれから、十数年が経った。
息子たちもそれぞれ、小学五年生と三年生になっている。
娘も幼稚園に入り、五歳になった。
あたしは台所で母さんとお昼ご飯の準備をしている。
ぐつぐつと夏場によく食べるそうめんを茹でていた。
「…可奈。和人さんは今日も遅いの?」
母さんが尋ねてきた。
「ううん。仕事が終わったらすぐに帰るって言ってたよ」
「そう。そうめん、ふきこぼれないように気をつけてね」
わかったと言いながら、ガスの火を止める。
鍋の取っ手を掴んで流し台に持って行く。
鍋をあらかじめ敷いておいた布巾の上に乗せて水道のバーをあげて、水を出した。
下にはザルとボウルが置いてある。
ザルの中に茹でたそうめんを熱湯と共に流し込む。
手早く、流水でそうめんをしめると水気を切った。
風鈴の音がちりんと鳴る。
それを聞きながら、ふと窓の外の風景を見やった。
空には大きな入道雲がある。
それに目を細めながら、昔に思いを馳せたのであった。
終わり
あとがき
どうも、筆者の千鶴です。
ここまで、読んでくださりありがとうございました。
いやあ、大団円まではいきませんでしたが終わりました。
もう、感無量です。初のラブコメだっただけに至らぬ点もあったはずです。
それでも、書き続けてよかったと今は思っています。
では、重ね重ねありがとうございました。
平成二十六年八月某日
石川千鶴




