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別れの危機とあたし4

田中の胸ぐらを掴んでいた狩野先輩はあたし達を見つけて、そのまま近づいてきた。

「ああ、お前ら。もう終わったのか?」

驚いたような顔でこちらを見てくる。

あたしの代わりに里絵が答えた。

「うん、終わったよ。こっちのね、美佐さんがあたし達に味方するって言ってくれたんだ。それと、田中が可奈にキスを無理矢理して迫ったとも聞いたしね」

最後にそう付け加えて、里絵と美佐は田中を睨んだ。

二人はじろりと見た後、田中は無視して、和人に声をかける。

「宮原、田中が反省してないんだったら。あんたが締め上げなよ。可奈の彼氏なんだからさ」

そう言ったのは美佐で次に里絵も笑いながら乗っかる。

「そうだよ。可奈の前でカッコいいとこ見せな」

「…俺の気も知らないで。田中からは可奈に迫ったことや脅したことは聞いたよ。狩野先輩と締め上げたとこだったんだけど」

既に締め上げるのは終わっていたらしい。

すると、里絵と美佐はなんだと残念そうな顔をした。

「もう、締め上げたわけ。意気込んでいた自分がバカみたい。まあ、でもいっか。あたしも新しい彼氏探そう。里絵ちゃん、誰かいい人いない?」

美佐の立ち直りの早さにはあたしも呆気に取られた。

里絵は苦笑いしながらも頷いた。

「ああ、涼君の友達でフリーの人はいるよ。何だったら、紹介しようか?」

美佐は嬉しそうに頷いた。


その後、締め上げられた田中は一目散にあたし達から離れていった。

逃げていく姿を見送ると美佐はあたしに頭を下げてくる。

「…本当、今までごめんね。その、可奈が羨ましかったんだ。宮原のこと好きだったのも本当だけど。それ以上に可奈のことを宮原に盗られた気持ちが大きくてさ。だから、少しくらい二人とも困ればいいんだって思ってた。けど、自分が間違ってるって気づけなくて。そしたら、よけいに物事がややこしくなってた」

「…美佐さんさ、田中にお金払えって言われなかった?」

腕を組んで里絵が問いかけた。

美佐は驚いた顔をしながらも首を横に振った。

「ううん、さすがに田中であってもそこまでは言わないよ。あたしからお金を払うからって持ちかけたの」

「なるほど。で、どれくらい払ったの?」

「…さすがに鋭いね。三万位は渡したよ」

金額の意外な高さにあたしは息を飲んだ。

高校生にとっては三万円は高額なお金だ。

バイトをしていないはずの美佐に払える金額なはずはない。もしかして、人にいえないような何かをして、稼いだのだろうか。

「…美佐、そのお金、どうやって用意したの?」

あたしは気づいたら、美佐に尋ねていた。

声が震えていたのは仕方がないと思う。

「どうやってって。その、短期間のアルバイトをしたんだよ。それで稼いで、田中に渡した」

淡々と話す美佐にあたしは腕を振り上げていた。


バチンと頬が鳴る音が辺りに響いた。

気がついたら、あたしは美佐の右側のほっぺたを平手打ちしていた。

里絵や他の二人も驚きのあまり、動けずにいる。

「…美佐、あんた、バイトまでしたんだったら。何で、人を陥れるようなことをするの!それに、法律に引っかかるようなやり方でお金を集めたんじゃないよね?」

一気にまくし立てると美佐はあたしを睨んできた。

「…なっ。法律に引っかかるようなことはやっていないよ!それでも、迷惑かけたことは謝るけど。殴ることないじゃん」

「殴りたくもなるよ!あんたは知らないだろうけど、あたしがどれだけ悩んだと思ってるの!」

それを言った後、あたしは二回目と腕を振り上げた。

カッカとなった頭ではこれ以上はいけないとは思えない。

美佐が目をつむって痛みに耐えようとした時だった。

あたしの腕を柔らかで温かな手が掴んでいた。

「…やめなよ、可奈。それくらいにしておきな」

「…里絵」

あたしは掴まれた腕を下ろそうとした。けど、がっちりと掴まれていてできそうにない。

「また、殴ろうとは思ってはいないよね?」

「…もう、思っていないよ。だから、放して」

すると、里絵はやっと放してくれた。

あたしはほうっと息を吐きながら、じんじんと痺れる手を軽く振った。

手は痛くてほっぺたを叩いた感触がまだ、残っている。

里絵から平手打ちしたことについて、謝るように言われる。それには和人や狩野先輩も頷いて、同意した。

仕方なく、あたしは美佐に向き直った。

「…えっと、美佐。ごめんね。平手打ちしたのはさすがにやり過ぎたと思ってる」

「…あたしこそ、本当にごめん。可奈の気持ち、考えてなかった」

二人して謝りあうと、自然と笑顔になっていた。



時刻が遅くなってきたので、五人で帰ることにした。

美佐は里絵と気が合うみたいで楽しそうにしゃべっている。あたしは和人と二人で後ろを歩いていた。

「…何か、あの二人。すごく気が合ってるみたいだね」

「うん。美佐と里絵があんなに仲良くなるとは思わなかった」

話していると狩野先輩が割り込んできた。

「こら、宮原。それに樋口さんも。二人していちゃついてんじゃねえよ。俺一人で寂しいじゃないか」

「寂しいですか?俺はそうは思わないけど」

すると、先輩はむきになった。

「俺は寂しいんだよ!何だよ、里絵は美佐ちゃんと仲良くなってるし。宮原は樋口さんといちゃついてるし。仲間外れにすんな」

「まあまあ、先輩。落ち着いて。後で俺がジュースおごりますから」

「…ジュースごときで機嫌が良くなると思ってんのか!」

やけっぱちになっている先輩をなだめながら、和人は自動販売機の近くへと行った。


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