別れの危機とあたし1
翌日、あまり眠れない中で目をさました。
別れるかそうしないべきかで頭の中はぐるぐるとしていた。和人が学生生活に復帰できるようになるまで、後二日くらいはある。
だから、明後日になったら、和人と話し合おう。
そう決めたのであった。
「…あら、可奈。おはよう」
いつも通り、母さんが声をかけてきた。 「おはよう。今日もお弁当、自分のを詰めるよ」
「そう?宮原君とつきあい始めてから、手伝うようになってくれたから。助かるわ」
母さんはころころと笑う。
あたしはそれに笑い返しながら、顔を洗いに洗面所に行った。
鏡に映った顔を見て、驚いた。
目の下に隈ができていたからだ。 これでは寝不足だとまるわかりだ。
蛇口を捻って、水を出した。
それで顔を洗うと、すっきりと目が覚める心地がする。
何回か繰り返して、顔についた水分をタオルで拭き取った。軽くローションをつけた後、歯磨きもすませる。
終わると洗面所を出て、二階へと上がる。
部屋に入って、制服に着替えると台所に戻った。
母さんがお皿に並べてくれたおかずやおにぎりをお弁当箱に詰めた。
詰めるのが終わると朝食を取る。
ご飯にお味噌汁、目玉焼きなどの定番メニューが並ぶ。
それらを急いで食べると、食器を流し台に運んだ。
「ごちそうさま!行ってきます」
お弁当の蓋を閉めて、布にくるむと、鞄の中に入れる。
「行ってらっしゃい。宮原君、来てないけど。気をつけるのよ」
そう言われながら、玄関に小走りでいく。
靴を履くと、ドアを開けて外に出た。
時間は七時四十分になっていて、あたしは遅刻にならないように急いだ。
和人が休学処分になってから、五日は経つ。
その間、一人で過ごしていた。
新しく、里絵と狩野先輩が友達になってくれたけど。
それでも、会いたいという気持ちは抑えがきかない。
「…おはよう!可奈、朝から辛気くさい顔してどうしたの」
後ろから声をかけられて、振り向いた。そこには里絵が立っていて、珍しく一人だった。
うっすらと染めた茶色の髪は朝日に照らされて、ツヤツヤとしている。
「おはよう。今日も元気がいいね」
皮肉を言うと、里絵はきょとんとした顔になる。
そして、あたしの背中をばしばしと叩いてきた。
「一体、どうしたの?可奈らしくないじゃん」
そう言われて、あたしはそうかなと返した。
「…あたし、最近はずっと、里絵や狩野先輩たち以外とは一緒にいなかったから。和人と会えなくて、寂しかったんだと思う」
「ああ、そっか。宮原、最近は来てないもんね。離ればなれとまではいかないけど。会えないとやっぱり、心配にもなるよね」
それにはこくりと頷いた。
里絵は背中から手をどけるとあたしに仕方ないよと言ってきた。
「学校の規則とかにはさすがにあいつでも、逆らえないよ。後、二、三日の辛抱だね」
「うん。待つしかないかな」
二人して頷きあうと、ゆっくりと歩き出した。
五月も下旬に近いけど朝方は空気が肌寒い。
冬服ー茶系のブレザーでネクタイをした制服だけど、風が吹くとぶるりと震えあがってしまう。
「今日はなんだか、寒いよね。もう、六月に近いのに」
あたしがそういうと、里絵も頷いてきた。
「本当だね。四月並の寒さかも。季節が逆戻りしてるのかな」
腕をすり合わせながら、答えてくれる。あたしも腕をすり合わせた。
早く、学校に行こうと思った。
学校に着くと、あたしたちはさっさと教室に入った。
まだ、八時頃で自習をしたり、しゃべっている生徒たちが目立つ。
あたしは真ん中の列の三番目の席に座った。
里絵は南側の窓の側の席に向かっていった。その四番目に里絵の机がある。
鞄を机の横にあるフックにかけると、椅子に座る。
「…あ、樋口さんだ。今日は鈴木美佐、来てないね」
「そうだねえ。里絵ちゃんは来てるけど。狩野先輩も最近、よくうちのクラスに来てるよね」
また、例の女子二人組が噂話をしている。
あたしは無視することにした。
「狩野先輩は宮原と仲良かったじゃん。樋口さんと里絵ちゃんが仲良いから、こっちに来るんだよ」
「…宮原と樋口さんがつき合っているから、里絵ちゃんの彼氏の先輩もこっちに来てるってこと?」
そうだよと頷く女子たちにうんざりした。
こそこそ話してても、ばっちり聞こえてるよ。
そう言いたくなった。
放っといて、あたしは鞄の中から、教科書を取り出した。
そして、ペンケースやノートなども出して、授業を受けるための準備をする。
里絵も同じように準備をしているらしかった。
和人の休学が終わるのは二日後の事であった。




