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ライバルとあたし6

今回も短いです。

授業が始まり、教室は先生の声とチョークを黒板に走らせる音、生徒が黒板の内容をノートに書き写す音しかしなかった。

カリカリとシャープペンの芯が削られる音などしかしない中で時は過ぎていく。時計の針が後二十分を指している。

時刻は午後一時三十分。

(早く、和人戻ってこないかな。暇すぎる)

ため息をそっとつきながら、私はノートにシャープペンを走らせる。

「…であるからして、この数式は」

先生がそこまで言うと美佐を見て、答えるように促してきた。

「鈴木、この数式の答えを言ってみろ」

美佐は渋々黒板を見ながら、答える。

「答えはaの二乗です」

「…正解。鈴木、座ってよろしい」

先生は厳しい顔を崩さずに言った。

美佐は言われた通りに席に着く。

あたしはその様子を見ながら、今更ながら美佐の頭の良さに歓心する。

成績は学年でトップというほどじゃないけど、二桁台にはいったことがあるらしい。

里絵も頭が良かったのではと思考を巡らせてみる。

ぼんやりとしながら、授業は終わりに向かっていく。

先生に当てられることもなく、穏やかに授業は終わったのであった。



六限目の授業も終わり、掃除当番をする時間になった。

里絵には先に帰ってくれるように伝えると何故か、怒られる。

「…可奈さ、一人で帰る気?涼君を待つ身にもなってよ。話し相手がいないと退屈なんだから!」

「ごめんって。あたしは一人でも帰れるから」

顔の前で両手を合わせて、お願いと頼み込む。

けど、里絵はなかなか、機嫌が良くならない。

「あたし、可奈を待ってる。宮原からは可奈のこと、くれぐれもって頼まれてるから」

きっぱりと言われてしまう。

そんなにあたしって弱いと思われてるのかな?

「でも、大丈夫だよ。里絵だって、狩野先輩と二人でゆっくりしたいじゃない?あたしに気を使わなくていいから」

「…そういうことじゃないよ。あたしはね、田中と美佐さんのことがあるから、安全の為に三人で帰ろって言ってんの。掃除っていったって、一時間もかからないっしょ?」

仕方なく、あたしは折れることにした。 「わかった。里絵、掃除は早めにすませるから。待ってて」

「そう、それでいいんだよ。じゃあ、あたしは廊下にいるから。終わったら、声かけてね」

里絵は笑いながら、教室を出て行った。あたしは手早く、道具を出してくると床を掃いたりした。

机を前や後ろにやるのは大変だから、そのままだけど。


掃除をさっさとすませて、後かたづけをする。

教室の隅の道具箱にしまい、扉を閉めた。

自分の席にある鞄を取ると、引き戸を開けて廊下に出た。

少し、離れたところに夕暮れ時のオレンジ色の日に照らされた里絵が立っていた。

「里絵。終わったよ」

声をかけると、黙り込んでいた里絵がすぐに気がついて、こちらに顔を向けた。 「可奈。じゃあ、涼君のとこに行こっか」

笑顔になって、あたしにそう言ってくる。

二人して並んで歩き出した。



道場に行ってみると、ちょうど、袴姿の狩野先輩がいた。

なかなか、和服姿が様になっている。

「涼君、来たよー」

元気良く、里絵が手を振りながら、先輩に声をかけた。

先輩は里絵の姿を見つけると近くにいた部長にことわりを入れてから、こちらにやってくる。

「里絵。それに樋口さん。いつもより、来るのが遅かったな」

「ごめん。可奈が掃除当番でさ。それで、待ってたら遅くなっちゃった」

里絵が言うと、狩野先輩は彼女の頭に手を置いた。

くしゃくしゃと撫でながら、仕方ないなと笑う。

「まあいい。樋口さんが当番だったのか。それで遅くなったのはわかった」

そういう先輩の表情は今までに見たことがないくらい、にこやかなものだった。


その後、練習試合を見ながら、里絵といろんな話をした。

和人との出会いや狩野先輩とつき合い始めた頃のことを聞かせてもらった。

「…前も言ったと思うけど、宮原とは中学の時からの友達だったことは知ってるよね?」

「うん。知ってるよ」

あたしが頷くと里絵は微笑んだ。

「あたしね、宮原のことを最初は可愛らしい子だなと思ってたんだ。けど、小学校の時から同じクラスだったらしい女の子がいてさ。その子に宮原のことを訊いてみたら、女子じゃなくて男子だって教えられて。すごく、驚いたよ。あの時はね」

別に宮原のことを異性として好きになったわけじゃないよと付け加えながら、里絵は話してくれた。

「へえ。でもさ、和人とは中学の何年の時に知り合ったの?そこがわからなくて」

あたしが首をひねりながら尋ねると里絵はごめんと謝ってくる。

「…ええと、宮原と同じクラスになったのは中学一年の時だよ。涼君、先輩とつき合い出したのは三年の時だったけど」

「ああ、それでやっとわかった。あたしさ、いつ頃に友達になったのかがよくわからなかったんだよね。ありがとう」

中一の時と聞いて、密かに驚いた。

本当にこれだけ長年のつき合いがありながら、異性としての意識を持たないとは。

不思議なこともあるものだと思った。

まあ、単純に互いに好みじゃなかったといえばそれまでなんだけど。

里絵は外見の割にはさばさばとしているから、和人も友人として接しやすかったのかもしれない。


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