表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/39

トラブルとあたし5

夜になって、父さんが帰ってきた。

着替えをすませて、キッチンにやってきたので、あたしは和人からの返事を早速、伝える。

「父さん、ちょっと、いいかな?」

声をかけてみると、父さんがこちらに視線を向けてくれた。 「何だ、可奈。どうした?」

「昨日、言ってた、和人のことなんだけど」

あたしが切り出すと、父さんはわかったのか、小さく肯いて、先を促した。

「和人にそのことを伝えたんだ。そしたら、いいって、言ってくれて。今週の土曜日に来るって、約束したから。来てくれると思うよ」

そこまで言うと、父さんはそうかと答える。

「宮原君、朝方に来ているのを見かけるだけだったから、どんな子かはわからなかったんだ。話をしたことがなかったからな」

それも当然だろうと、あたしは肯いた。 その後、父さんは昼頃に来てくれるように伝えてくれないかといってきた。

あたしはメールで知らせると約束した。


夕食を終えて、自分の部屋に向かう。

中へ入ると、勉強机の上のケータイがメロディと共に震えている。

液晶画面を見てみると、メールが届いていると、封筒のマークが表示してあった。

すぐに、ボタンを押して、メールを確認する。


〈可奈へ

今日は田中のことで恐い思いをさせて、ごめん。

後、明後日が土曜日だったよな?

その日になったら、家に行くから。〉

そんなことが書いてあった。

あたしは父さんに言われたことを思い出して、すぐに、新規メールを作成した。

〈和人へ

メールをありがとう。

田中のことで心配させて、こちらこそ、ごめんね。

それで、土曜日のことなんだけど、父さんから、「お昼からだったらいい」と言われたんだ。

そういうわけで、お昼、午後に来てくれるかな?

駄目か、OKか、お返事くれるとありがたいんだけど。

じゃあね〉

だいぶ、勝手な内容になってしまったけど、送信してみた。 ふつう、来てくれる?とか、書いたら、相手は怒るだろうか。

あたしは和人が返事をくれるのをヒヤヒヤしながら、待ってみた。

二十分くらいして、返信のメールが届く。

〈土曜日のことについてだけど。

お昼に来るのは、別にかまわないよ。

午後一時くらいでいいかな?〉

短く、そう書いてあって、あたしは胸をなで下ろしながら、すぐに返信する。

〈いいよ。

父さんにも伝えておくね〉

これで一段落したと思いながら、返事を送ったのであった。


課題をやってしまって、気が付けば、午後十一時になっていた。

お風呂にも入ったし、後は寝るだけだ。田中の冷たい目がふと、脳裏をよぎる。あたしはそれを取り払うために、頭を横に振った。

『鈴木美佐に頼まれた』

と、あいつは言っていた。

美佐がお金を使って、田中を買収し、あたしと和人の仲を裂こうとしていることに今更ながら、寒気がした。

何で、そんなに悪意を持たれなければならないのか。

あたしは訳がわからないまま、部屋の蛍光灯のスイッチをオフにして、眠りについた。



翌日、いつもの通り、和人が迎えに来てくれた。

母さんお手製のお弁当をまた、彼にも渡した。

詰め込むのはあたしがやったと伝えると、悪いなと笑いながら、謝られた。

「それじゃ、行ってきます」

「行ってらっしゃい。宮原君、可奈のこと、お願いね」

あたしが玄関を出ようとしていたら、母さんが和人に声をかけてきた。

それに、和人はにこやかに笑いながら、応じる。

「わかりました。任せといてください。後、土曜日も来るのでお願いします」

「ええ、いつでも、遊びに来てちょうだい」

母さんが肯くのをみて、あたしたちは学校へと向かうために、家を出た。



行く途中で、和人は喜びながら、あたしにこう言ってきた。 「…やった!可奈のお母さんに家に行くOKをもらえた。後はお父さんだな」

ガッツポーズを取りながら、はしゃいでいる。

「そんなにうれしいかな?母さんに認めてもらえたの。あたしにしてみると、和人のご両親にも挨拶しないといけないと思うんだけど」

真面目な調子で言うと、和人は途端にがっくりとうなだれてしまった。

やっと、自分の両親にも紹介しなければならないことに気が付いたらしい。

「…そうだった、可奈を俺の親にも紹介しないと、意味ないよな。後、美佐と田中の件もかたをつけないといけないしな」

頭を抱えて、悩み出したので、あたしは先に行こうと早歩きをして、追い越した。

五メーターほど、離れてから、和人は気づいたみたいで慌てて、追いかけてくる。

「可奈、待ってくれよ。置いてかないで!」

あたしは意外と情けない声を出す和人に笑いながら、彼が追いつくのを待っていた。

二人で並んで、また、歩き出すと、自然と手を繋いでいた。和人の手の温もりに、安心しながら、あたしは一歩を踏み出す。

和人がいてくれたら、美佐や田中であっても恐くはない。

不思議とそんな気持ちになっていた。


学校に着くと、いつも通り、教室に入る。

だが、美佐の姿がない。田中は他の男子としゃべっている。

目をきょろきょろさせて、辺りを見回してみたが、何食わぬ顔でみんな、いる。 あたしは席につくと、鞄から、教科書などを出しながら、机の中に入れた。

そんな時に、里絵さんが声をかけてきた。

「…樋口さん。おはよう。今日は鈴木美佐さん、お休みだって聞いたよ」

あたしは後ろを向いて、答える。

「おはよう、里絵さん。美佐、来ていないの?」

「うん。美佐さんね、体調が優れないとかじゃなくて、どうも、ずる休みしたみたい。もしかすると、不登校にでもなっちゃったのかも」

あたしは小声で言われて、大丈夫だろうかと思った。

やっぱり、美佐はまだ、怒ってるのかもしれない。

和人とあたしが別れないものだから、学校に行くのも嫌になってしまったのか。 それはないだろうけど。

「…あんまり、気にしない方がいいよ。美佐さん、田中をお金で釣って、樋口さんと浮気させようとしたって、宮原から、聞いたんだよね。あの子、まだ、諦めてなかったら、何するかわからないから。あたしでよければ、いつでも、言ってね」

忠告と励ましをしてくれたけど、あたしはよけいに、不安になる。

それでも、お礼は言ったのであった。



里絵さんはいいよと言いながら、席に戻ろうとする。

だけど、あたしに向き直って、小声で告げてきた。

「…あたしね、美佐さんが何で、樋口さんに恨みを持っているのか、知ってるんだ。美佐さんは、それこそ、一年の時から、宮原のことを好きだったらしいんだよね。それと、あたしのことを宮原の彼女だと、勘違いしてたみたいだから。それも理由の一つみたい」そこまで言われて、あたしは嘘だろうと思った。

「…何で、里絵さんが和人の彼女だって、勘違いをしたの?」

小声で問うと、里絵さんはおかしそうに笑った。

「あたしね、中学の時に宮原と同じクラスになったことがあってね。その時からの仲だから。まあ、手は出されたことはないけど。つき合っているんじゃと、噂になったことはあるんだ」

里絵さんの話によると、その噂をどこかで聞いて、美佐が勘違い、いや、誤解をしたのではということだった。

確かに、里絵さんは和人と仲が良いし、恋人同士と勘違いされてもおかしくはない。

けど、今はあたしが彼女なのだ。

何人目かはわからないけど。

美佐にも認めてもらいたい。

そんな気持ちはあったが、今の状態では無理だと思ったのであった。


一時限目の授業が始まり、少しずつ、時間は過ぎていった。お昼休みの時に、また、里絵さんが声をかけてきた。

「樋口さん、宮原と今日も屋上に行くんだよね?」

「…そうだけど。それがどうかしたの?」

逆に問い返すと、里絵さんは意味深に笑いかけてきた。

そうして、耳元に顔を近づけてきたのだ。

「宮原と一緒にお弁当、食べてるって、他の女子たちが騒いでたから。何だったら、あたしもついて行くよ」

あたしは、え、と声を上げた。

すると、後ろから、低い地を這うような声が聞こえてきた。 「…里絵、何を可奈に吹き込んでるんだ?」振り向くと、和人が仏頂面で立っていた。

「あーあ、宮原に見つかっちゃった。後、もう少しで樋口さんとお弁当、一緒に食べられたのに」

里絵さんは本当に、残念そうにしている。

「…可奈とお弁当を食べていいのは、俺だけだ。里絵、お前と一緒なのはダメだからな」

「小学生と同じようなこと、言わないでよね。樋口さんは俺のだって、独占欲丸出しじゃん」

肩をすくめながら、なかなかなことを言ってくれる。

あたしは、恥ずかしさのあまり、顔が熱くなるのがわかった。

独占欲丸出しって、里絵さんもよく見てるというか。

和人は思いっきり、顔をしかめさせていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ