表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/39

トラブルとあたし1

今回は長めです。

足がふらふらになっていたけど、自力で何とか、帰ってきた。

顔や体が熱くて、まだ初夏なのに、汗が滝のようにあふれ出てくる。

和人は心配そうにしていたけど、あたしは送るのを断った。家にたどり着くと、母さんがいつも通り、お帰りと言ってくれる。

「ただいま。早いけど、ちょっと、シャワーを浴びてくるね」

「…シャワーを浴びるって。雨に降られたんだったら、わかるけど。別に、目立って、汚れたりなんかしていないわよ?」

「ちょっと、汗をかいちゃって。あ、父さんには内緒にしてね?」

すると、母さんはあらまと驚いて、あたしに意味深な視線を投げかけてくる。

あたしが必要以上に汗をかいていることに気が付いたらしい。

「ああ、なるほどね。わかったわ、着替えて、シャワーをしてきなさい」

肯きながら、キッチンに戻っていった。 あたしは二階に上がると、制服を急いで脱いだ。

そして、長袖のシャツとスラックスを取り出して、着込む。 新しい着替えを持って、下へと降りた。バスルームに入ると、服を脱いで、カゴの中に放り込んだ。 腕がうっすらと赤くなっていて、和人にキスされていたのを思い出して、また、体が熱くなって、火照ってしまった。


バスルームに入って、蛇口をひねった。さあっと、お湯が出てきて、顔などに当たる。

汗や他のものも洗い流されていくようで、気分がさわやかになる。

髪を濡らして、シャンプーをしたり、リンスを終えると、一層、さっぱりとなった。

(…母さん、あたしが和人とキス以上の事したって、思っているだろうな。本当はしていないんだけどね)

嘘をついてしまった事に、少し、罪悪感を感じながらも、体を洗った。



上がると、髪をバスタオルで念入りに水気を取った。

ボディソープで洗ったから、汗はすっかり、取れていたけど。

少し、フルーティな感じの香りがお気に入りのもので、いつも使っている。

体の水気も拭うと、服を着て、ドライヤーで髪を乾かした。肩につくまでくらいしかないので、五分もすれば、乾いた。 三十分くらいは入っていただろうか。

キッチンにまで行くと、既に、五時四十五分くらいにはなっていた。

「…あら、上がったのね。父さん、今日は残業で遅くなるらしいから。二人で夕飯、食べちゃおっか」

「わかった。それで、今日は何?」

「さばの味噌煮とほうれん草のおひたしと。お味噌汁ね。栄養バランスを考えて、作ったの」

あたしは、笑いながら、はいと返事をした。



母さんと二人で食事を終えると、後かたづけをした。

お皿を洗ったりするのを手伝いながら、あたしは和人の事を思い出さないようにする。

乾燥機の中にお皿を入れて、洗い終わったら、スイッチをONにした。

「ご苦労さん。もう、いいわよ。宿題あるんなら、やっちゃいなさい」

あたしは肯いて、部屋へ行くと言って、キッチンを出た。



古文の課題と地理の課題、数学の課題を必死こいて、やった。

「何だって、三つも出るんだか。終わらないじゃない!」

一人で怒りながら、地理の課題のプリントの空欄を答えで埋めていく。

がりがりとシャーペンに力を入れて、書いていった。

日本の県名を全部、書けという課題だった。

中学の時にもやった問題だ。

復習とか何とか、先生が言っていた。

埋め終わると、次は数学の課題だ。

問題集の十ページから、十五ページまでの問題をノートに写しながら、解いていった。

αとか記号が並んでいて、あたしは教科書を引っ張り出して、うなり続けた。

「可奈、もう、十時よ。そろそろ、寝ちゃいなさい」

「…ごめんね。後、半分が終わったところだから。これ、解いちゃわないと明日、困るんだよね」

「まあ、それもそうね。夜更かしはしないように」

はいと返事をすると、母さんはドアを閉めて、去っていった。


課題をやり終えたのは、十一時頃だった。

あたしは急いで、課題用のプリントや教科書などを元の棚に戻す。

時間割も見ながら、明日の準備をして、鞄に全部を入れた。ふいに、勉強机の上にケータイが鳴った。

マナーモードにしていたから、ブーブーと音がして、震えている。

ボタンを押して、チェックすると、和人からだった。

〈可奈へ

今日はちょっと、先走りしすぎた。

ごめんね。

それと、課題たくさんあるから、頑張って〉

そう書いてあって、あたしはうれしくなった。

〈R:可奈へ

こちらこそ、ごめん。

謝る必要はないよ。和人も課題、頑張ってね〉

あたしはすぐに、ケータイを操作しながら、返事を書いて、送った。

一日に一回は必ず、メールのやりとりをしようと二人で決めた。

意外と和人はマメで、毎日、夜になると送ってくるようになっている。

そこがよけいに、美佐には申し訳ないと思わされていた。

それでも、別れることなんて、できない。

いつのまにか、和人を好きになっている自分がいて、驚いてはいたのであった。けれど、この憂鬱な気持ちは晴れようがないらしかった。



朝方、また、早めに目が覚めた。

今日も和人には内緒で、先に行こうかと考えたけど。

あたしはカレンダーを確認してみた。

だが、五月十七日となっていて、金曜日になっている。

明日は土曜日だ。

(和人とデートするか、家に遊びに行ってみようかな。つき合って、やっと、五日が経った!)

少しだけ、沈んでいた気分が浮上する。 あたしは鞄や体操着を準備すると、一階に下りた。



洗面所で顔を洗い、歯磨きをする。

終わると、また、二階へと戻った。

制服に着替えながら、時計を見てみる。すでに、六時過ぎになっていて、あたしは急いで、襟元のスカーフを結んだ。

一応、できたので、鞄と体操着を持って、もう一度、下りた。

「…可奈、おはよう。えらく、今日も早いな」

眠たそうにした父さんから、声をかけられた。

「おはよう。和人が迎えに来るだろうから、早めに起きたんだ」そういうと、父さんはまじまじとこちらを見てきた。

眠気が一気に、吹き飛んだらしい。

「…今、和人っていったな?誰なんだ?」

あたしはまずいと思った。

父さんはあたしに彼氏ができたということは知っていても、まだ、感情は追いついていないみたいだ。

「…宮原君のことだよ。下の名前が和人っていうんだけど」

本人から、そう呼んでほしいと言われたことは伏せておいた。


「そうか、宮原君の事だったんだな。一回くらい、うちに遊びに来てもらったらどうだ。その時に父さんにも改めて、紹介してくれないか?」

父さんは少し、寂しそうな顔であたしに言ってきた。

それには肯くしかない。

「わかった。明日か明後日、休日だから、遊びに来てくれないか、訊いてみるよ」

あたしはそういって、キッチンへと向かった。



「おはよう。お弁当、まだ、おかずを詰めていないから。やってくれる?」

あたしははいと言って、お箸を持って、ガス台へと近づく。テーブルの上にあるお皿にはおかずが盛りつけてある。

お箸でウィンナーや卵焼きを父さんと自分のお弁当箱に入れていった。

けれど、大きめのお弁当箱がもう一つ、用意してあり、あたしは腕を止めてしまった。

「…ねえ、母さん。何で、お弁当箱、三つもあるの?」

ふと、尋ねてみたら、母さんはこちらを振り返って、答える。

「ああ、それね。宮原君の分よ。昨日、あんたを迎えに来てくれた時にね、少し、話をしたのよ。そしたら、可奈がお弁当でしょ。宮原君、いつも、学食のパンですませているらしいから、うらやましがってね。それで、試しに用意してみたの」あたしはへえと言いながら、おかずを和人用のお弁当箱にも詰めたのだった。


お弁当の用意ができあがると、ふたを閉めて、自分のを包んだ。

和人の分も同じようにすると、父さんがキッチンに入ってきた。

「あれ、可奈。お弁当、二つも持って、どうした?」

「…和人の分だよ。母さんが試しに、作ってくれた」

淡々と答えると、父さんは苦笑いした。 「……だったら、いっそ、おまえが作ってやったら、どうだ?」「それができていたら、そうしてるよ。今日は起きる時間が遅かったから、作る暇がないし」

つっけんどんに言うと、父さんはそうかと答えながら、椅子を引いて、座った。あたしも続いて、座ると、母さんが並べてくれた朝食に手を伸ばしたのであった。



七時頃になって、和人が迎えに来た。

あたしは自分のを鞄に入れると、もう一つを持って、玄関に向かった。

「おはよう!今日は待っていてくれたんだな」

「おはよう。さすがに、二日続けて先に行っていたら、悪いと思ってね」

あたしは手に持っていた包みを和人に渡して、靴を履いた。 「…あれ。これ、どうしたんだ?」

不思議そうに見つめる彼に、答える。

「和人のお弁当だよ。母さんがついでにって、作ってくれたの。おかずを詰めたのはあたしだけど」

すると、和人は驚いて、目を見開いて、固まってしまった。 けれど、それも一瞬でうれしそうな笑顔に変わる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ