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親友とあたし2

今回は長いです。

古文の授業も終わり、六時限目も無事にすませることができた。

放課後になって、教室には誰もいなくなる。

あたしは部活や委員会活動などには、入っていない帰宅部である。

だから、暇ではあるのだけど。

帰る気にもなれず、椅子に座って、ぼうっとしていた。

夕焼け空が綺麗だなと、何とはなしに思っていると、教室の戸が開かれる音がした。

がらりと開けられて、入ってきたのは、今日、一番に会いたくない人だった。

宮原である。

「…あれ、樋口。まだ、残ってたのか?」

ゆっくりと振り向けば、オレンジ色の日光に照らされた宮原が視界に入る。

彼の髪は赤茶色に染まり、瞳もオレンジになっていて、きれいだ。

それに見とれながらも、心臓はばくばくと早く、鳴っている。

「み、宮原。そっちこそ、まだ、帰ってなかったの?」

何とか、返すと、宮原は苦笑いしてみせる。

「いや、俺さ。その、先生にプリントの整理を頼まれて。それの手伝いをやらされてたんだよ」

あー、疲れたと言いながら、左肩をぐるぐると回している。 ふうんと頷きながら、また、空を眺めようと首を元の位置に戻した。


あたしがまた黙って、景色を眺め出すと、宮原のため息が聞こえた。

てっきり、外へ行くとばかり思っていたので、あたしは驚いて、振り向いた。

「樋口さ、俺がいるんだから、話をしようとは思わないわけ?たく、熱を出していやしないかと心配していたのに。冷たいなあ」

「そんなことはないよ。オレンジ色に空がなってて、綺麗だなと思って、見てたんだけど」

すると、宮原はあたしに近づいて、遠くをみるような目つきで、窓ガラスの向こうを見つめた。

「…本当だ。明日は晴れるかな。確かに、樋口の言うとおりだな」

このまま、ゆっくりと夕焼けを眺めるかと思いきや、あたしの手に宮原が触れてきた。

また、あの真剣な目であたしを射抜いてくる。

「樋口。いや、可奈。今日、よかったら、俺と帰らない?送ってくよ」

断るのは許さないとばかりに、あたしの右手を強く、握ってくる。

首を縦に振るしかない。

「わかった。一緒に帰ろう」

震える声でそう言うと、宮原はうれしそうに笑う。

よかったと口にしながら、あたしを抱きしめてきた。

それを嫌がらずにいると、熱が出ていなくてよかったと安心したような表情になっていたのであった。


結局、一緒に帰ることになったわけだけど。

あたしは宮原と少し、距離を空けて、歩いていた。

どうしてかというと、照れくさかったからということもある。

告白をされたのが今日の朝方だったわけで。

めまぐるしい一日だったと思う。

「可奈、やっぱり、俺が触れたせいか、今日は熱が出なかったな。何となくだけど、理由がわかった気がする。可奈は俺の事を意識していたから、熱が出たりしてたんだよ」

あたしは恥ずかしさのあまり、顔から、火が噴き出そうになった。

「…それはそうかもしれないけど。小さい子とかじゃないし。あたしはもともと、熱が出やすい体質なだけだと思う」

しどろもどろになりながら、そう言い返してみた。

人が欲求不満になってるとでもいうのだろうか。

「そうかなあ。でも、抱きしめたりしたら、体調が悪くならなかっただろ?」

「あたしにとっては、宮原が薬みたいだって、いいたいの?」

質問に質問で返すと、宮原は驚いたらしく、目を見はった。 そして、お腹を抱えて、笑い出したのだ。

あたしは何か、まずいことを言ったのかと思ったけど、違うらしかった。

宮原は違うからといいながらも、笑うのをやめようとしない。

「…俺が可奈の薬ね。それ、良いたとえだな」

あたしはやっと、宮原のいいたいことがわかって、顔がさらに熱くなるのを止められなかった。

「わざといった訳じゃないよ。ただ、思いつきで口にしただけだから!」

慌てて、訂正しようとする。

宮原はさらに、笑い出した。

「そんなに、慌てなくていいからさ。けど、可奈のことをあんなに心配してたのに。渡辺には悪いことしたな」

「美佐には、あたし達がつきあいだした事、報告しとかないとね。確かに、それをしなくちゃならないのに。忘れてた」

すると、宮原はうれしそうにあたしの手を握ってきた。

「…やっと、つき合う気になってくれたか!それは、OKということでいいんだよな?」

あたしは渋々、頷いた。

まさか、クラスで、人気者の男子とつき合うことになろうとは。

明日は雨でも降るのではないだろうか。あたしは空を仰ぎながら、宮原とつき合うことについて、美佐に申し訳なく思った。

いつか、謝らなければならない。

宮原はそれでも、あたしがやっと、YESの返事をしたのを喜んでいたのであった。 それが厄介なことに繋がるとは思いもしなかった。


一緒に帰って、途中で別れようとした。 だが、宮原はあたしが心配だからと家まで、付いてきた。

「可奈、じゃあ、俺は帰るから。明日も迎えにくるよ」

そうして、そのまま、帰るはずだった。あたしが門を開いて、中へ入ろうとする時だった。

宮原の顔が近づいてきたと思ったら、頬に何かが掠める感触があった。

「…なっ?!今、何をしたの」

悪戯っぽく、にやりと笑いながら、宮原は満足そうにしている。

「いやあ、頬にキスしただけだって。これくらいで、恥ずかしがってちゃ、後がもたないよ?」

こういうのを小悪魔というのだろうか。 「もたなくてもいいよ!外でするだなんて、あんた、何考えてんの?」

怒りのあまり、宮原の頬をぶとうとした。

けれど、素早く、よけられてしまう。

「たく、彼氏を殴ろうとするなんてな。可奈は乱暴だ」

「…乱暴で結構。やっぱり、OKしなきゃ、よかった。あんたにふいを突かれるとは」あたしはわなわなと震えながら、睨みつけた。

宮原は笑いながら、ひらひらと手を振って、帰っていった。あたしは恥ずかしさと悔しさに、顔が熱くなるのを感じた。

家の中に入ると、母さんが玄関まで、出てきてくれた。

「あ、お帰り。可奈、あんた、今日は遅かったわね」

「ただいま。今日はなかなか、帰る気になれなくて。そしたら、宮原君が一緒に帰ろうと誘ってくれたんだ」

作り笑顔で言うと、母さんは驚いたらしく、目をぱちくりとさせる。

靴を脱いであがると、あたしは二階に行こうとした。

「…ちょっと待ちなさい、可奈。宮原君ていったら、同じクラスの男の子だったよね?」

「うん、そうだけど。それがどうかした?」母さんは真面目な顔でこう、のたまった。

「もしかして、この間、言ってた子のことじゃなかった?」

あたしは首を傾げながら、母さんの答えを待つ。

「…その、見たら、熱を出してしまうとかいう。宮原君がそうなんじゃないの?」

「そうだよ。宮原君にもそれ、言った。そしたら、自分を過度に意識するんじゃとか、いわれたけど」

あらまあと、母さんは目を見開いた。

「その子、他に何か、いってなかった?」

「…告白された。自分が触ったら、治るんじゃないかと思ったらしくて」

すると、あたしの両肩をつかんで、揺さぶられた。

いきなりの行動にこちらが驚いてしまう。

「あんた、告白されたの?だったら、初彼氏じゃないの!」

どうして、わかるのかとあたしは呆気に取られてしまった。母さん、まだ、つき合って、一日しか経っていないよ。

そう、突っ込みたかったけど、浮かれてしまっている母さんを止めることはできなかった。


その日の夕食では、母さんはあたしの好きなエビフライを機嫌良く、出してきた。

けれど、父さんは不思議がっている。

そりゃ、当たり前だろう。

「…母さん、どうしたんだ?えらく、機嫌がいいな」

「それはそうよ。やっと、可奈に彼氏ができたんだから。お祝いにと思ってね」

にこにこと母さんが答える。

父さんはかなり驚いて、お箸を落としそうになった。

「可奈に彼氏。そうか、もう、そんな年なんだなあ」

しみじみと言う父さんにあたしは、ほっと胸をなで下ろす。 意外と、穏やかな反応に安心したのであった。

「可奈、その。彼氏って、どんな子なんだ?」

「…同級生でクラスも一緒の子だよ。性格も明るいし。顔は女顔だけど、イケメンでね」

そうかと父さんは答える。

「もしよかったら、今度の休みに家に連れてきたらどうだ。父さんも会ってみたいな」

あたしはその返答に、どうしようかと思ったのであった。


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