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君とあたし10

「…ねえ、何とか言ったら、どう?宮原とつき合ってんの?」

女子は全く、信じられない事をあたしに言ってみせた。

「…宮原は、あたしとつき合ってなんかいないよ。ただ、ちょっかいを出されただけで」

言い訳を口にしてみたけれど、女子はきつく、あたしを睨んできた。

「あんた、それ、本気でいってんの?宮原は簡単に女子にちょっかい、かけたりしないよ。あたしさ、話したことあるから、わかるんだよね。宮原はああ見えて、意外とオクテだから」

「…オクテ?あいつが?!」

信じられないとあたしは声を上げていた。

けど、告白されたとは言いにくい。

「そうだよ。あたしの勘だと、宮原、樋口さんのこと。本気で好きだから、抱きついたりしたんじゃないの?」

真剣に言ってくる女子の意図がつかめない。

「信じられないよ、あたしには。あなたの方が宮原のこと、好きだから、そんなこと言って、牽制してんの?」

そうとしか思えないと言い返すと、女子はへえと頷きながら、皮肉げに笑ってみせた。

その笑い方は嫌な感じのものだった。


「かわいそうにね、宮原も。好きな相手にそんなこと、言われるとは。あたしね、あんたに親切にも忠告しにきたんだよ。宮原は他の女子にも人気あるし、ぼやっとしてると、取られちゃうよ?」

「じゃあ、何で、あたしに言いに来るの。仲の良い友達でもないし。忠告する必要ないじゃん」すると、女子はくすりとおかしそうに笑う。

「樋口さんさ、本当にわからない?あの美佐って子も宮原の事、好きみたいなんだよね。あたし、あんたがあんまり、鈍いから、声をかけてみたんだよ。早めにどうにかしないと、親友に彼氏、取られちゃうよ」

「…よく、知ってるんだね。あなた、名前は何ていうの?話したこと、ないはずだけど」

「あたし?名前は鈴木里絵。一応、樋口さんとは一年の時、同じクラスだったんだよね」

えと、あたしは驚きのあまり、固まってしまった。

同じクラスだった?この鈴木さんが。

「…本当に、覚えてないみたいだね。宮原はさ、樋口さんのこと、ずっと、気になってたみたいだよ?」

柔らかく笑った鈴木さんは、あたしに、耳元でじゃあねとささやいて、自分の席に戻っていった。

あたしは呆然としながらも、次の授業を知らせるベルの音で、我に返ったのであった。


一時限目が無事に終わり、時間は容赦なく、流れていった。あっという間にお昼休みがきた。

美佐があたしの席まで、お弁当を持って、やってくる。

「可奈。宮原に言われているし、屋上まで行こう」

あたしも頷いて、鞄から、お弁当の包みを取り出した。

それを持って、席を立つと、美佐と屋上へ行った。

「宮原には、その。告白をされたんだよね。朝方、抱きしめられたのも本当だし」そう、簡単に説明をすると、美佐は目を大きく見開いて、驚いてみせた。

「…鈴木さんが言っていたの、本当だったんだね。私ね、宮原のこと、好きなのは当たっているよ」

あたしは思わぬ事を耳にして、混乱した。

今、美佐、宮原が好きって言わなかった?

「…え、それ、本当なの?!」

あたしは小さく、驚いて、声を上げてしまった。

「うん。私、宮原のこと、一年の時から、気になってたんだ。だから、可奈に宮原が告ったと聞いた時は嘘だと思った。可奈は友達だし、好きな人、巡って、関係を壊したくなかった」

真剣な表情で話す美佐は今朝とは、別人のように見えた。


いつの間にか、屋上へ続く階段に来ていた。あたしと美佐は無言で、階段を上がる。 沈黙が痛いほどで、この場から、逃げ出したくなった。

ドアの所までくると、ゆっくりと美佐が開ける。

「…来たんだな。先に来て、待っていたんだ」

宮原がにこやかに笑いながら、あたしと美佐を出迎えた。

「それで、あたしと美佐に話があるって、言っていたよね。今朝のこと?」

短く切り出すと、宮原は頷いた。

「そうだ。とりあえず、座ろう。ドアを開けっ放しにしていたら、誰かに聞かれるかもしれないし」

美佐に先に行くように促して、あたしはドアを閉める。

宮原に近づいて、二人して、少し距離を開けて、座った。

膝の上にお弁当箱を置いて、包みを開いた。

蓋を開けて、食べ始めた。

中には、塩味の卵焼きとかウィンナーとか定番のものが入っている。

「…樋口や渡辺のお弁当、どっちもうまそうだな。と、それよりも俺が言いたいのは、樋口の体のことについてだった」

のぞき込むようにして、こちらを見てくる宮原は真面目な表情で切り出してきた。

美佐は訳の分からなそうな顔になっている。


「…可奈の体のこと?宮原、あんた、何か知っているの?」

睨みつけながら、問いただす美佐に、宮原は頷いてみせる。 先ほどまでの和やかな雰囲気は、どこかへすっ飛んでいってしまった。

「その、樋口は俺を見ると、熱が出るんだってさ。原因を突き止めたら、治るんじゃないかと思ったんだ。だから、渡辺にも訳を話しておこうと思ったんだけど」

はあ、何それと美佐は一気に不機嫌になる。

それはそうだろう。いきなり、あたしの熱が出る理由が人、しかも異性を見てだなんて。

納得できるはずがない。

「…宮原、何度も言うけど。あんた、可奈を抱きすくめたのはその熱が出るからとかいうんじゃないよね?」

「いや、熱が出るんだったら、俺が何かしても、出る可能性があるじゃないか。だから、試しに、抱きしめたりしたら、どうかなと思ってさ」

すると、美佐はぎろりとあたしから見ても恐い目つきで宮原を睨みつけた。

宮原は乾いた笑い声を立てて、よその方向を向いている。

あたしはその二人に挟まれて、苦笑いするしかなかった。

美佐が今にも、殴りつけんばかりな表情になっているのを横目で見て、ため息をつきたくなった。

「…宮原、あんた。可奈はあたしやあんたと比べたら、かなりの奥手だよ?しかも、あんたを見たら、熱出して、ぶっ倒れるときた。そんなこの子にちょっかいを出したんだったら、ただじゃ置かないから。可奈はあたしの親友だからね。遊びのつもりで手を出したりしても、後でしばかせてもらうよ?」

不穏な笑い方をしながら、美佐は宮原を脅す。

持っているお箸をへし折りそうなくらい、美佐は手に力を入れている。

「…美佐、とりあえず、落ち着いて。宮原はあたしの熱が自分に原因があるとわかっているらしいから。その、告白されたんだけど」

あたしがはっきりと言うと、美佐は驚いて、お弁当を脇に置いた。

そして、立ち上がって、宮原の元に向かった。

いきなり、宮原の胸ぐらをつかんで、がくがくと揺さぶりだしたのだ。

「…あんた、可奈に何をしてんのよ!あたしもまだ、告白すらしていないのに。可奈に先を越された!」

あんたのせいだからね!と大声で叫びながら、宮原の頬を摘んだ。

美佐の形相はかなり、恐いものになっていた。

あたしはお弁当を脇にどけると、立ち上がり、二人に慌てて、近づいた。

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