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3…一禍団欒?-Part/α4-2

 ガタゴトと電車に揺られること約10分くらい。

 私は電車の窓から見える風景を眺めていた。反対側の窓からは海が見えるけれど、こっち側からは普段私達の住んでいる町が一望できる。

「わぁーお。結弦ん結弦ん、よきに眺めるぷらいばしぃ・びゅーだねぇ」

「携帯の機能じゃ表示できない景色だもんねぇ」

 向かいの席に座ったラミぃも普段のはしゃぎようはなりを潜め、窓の外の景色に見入っているようだった。

「ラミぃはこういうのは初めてなのかい?」

 私が尋ねると、ラミぃは「およ?」と顔をこちらに向ける。

「こういうのとはなんぞやいかに」

「遠くに旅行したりさ」

「むぅー」

 ラミぃは少し考え込んでから、

「特になかりけりにしもあらずんばなしだねぇ」

「そっか。初めてなんだね?」

「はいはいー」

 笑顔でラミぃが頷く。

 この子の話す言葉は、基本うわべだけだ。実際にどういう事を言っているかは、結弦さんも雰囲気で何となく察するしかできない。ラミぃの本心を知るのはラミぃだけ、ということだ。

 ラミぃと暮らし始めてもう1ヶ月ほど。未だにラミぃには言語の面をはじめとして謎な部分が多い。しかし、基本的に何か気になっても深く考えないのが水嶋家の家風なので、次女たる結弦さんもそう言った面倒そうな考え事はしないことにしていた。

 天使とかなんとか、そういう面倒な考え事は頭脳労働派の仕事。桐也君とか桐葉先輩とか。

 という訳でアクティブ派の結弦さんは、こうしてぼんやりと窓の外の景色を眺めているのである。


「しっかし、相変わらずの景色だねぇ」

 私は窓から見下ろした景色にそう呟いた。

 何度かこの電車に乗って御琴先輩の家に行った事はある。でも、いつでもこの景色は変わらない。

 目下に広がる緑色と、遠くに見える町並み。急に田舎の山の中を走る電車みたいな感じになる。距離的にはそんなに離れていないはずなのに、不思議な感覚だ。

 すると、相変わらず子供みたいに窓に顔を貼り付けていたラミぃが、

「結弦ん、あれをすぃーいんぐとぅー」

「ん? なんだい?」

 ラミぃの指さした方向に目をやると、周囲の緑からあからさまに浮いた存在が1羽。

「わお! これは珍しいね」

「ぶるーばーど・おぶ・はっぴー、だねぇ」

 ラミぃと私の視線の先には、緑の自然の上を飛び回る、綺麗な青い鳥がいた。

 ぱたぱた、と羽ばたきながら緑の上を飛び回るそれは、夜空に浮かぶ流れ星みたいだった。

「綺麗だねぇ」

「ほんとにりありぃ、だよぉ」

 私達がそう会話を交わすと、突然視界が真っ暗になった。トンネルに入ったからだ。

 当然、鳥は見えなくなってしまった。

「むぅー……」

 と、あからさまにラミぃが不機嫌そうな表情をしている。

「結弦ん結弦ん、これはいかに」

「トンネルに入っちゃったからねぇ。もう見えないかも」

「とんねる?」

 疑問符を大きな瞳に浮かべながらラミぃが首をかしげる。

「山とかに穴を掘って、電車が通れるようにするのさ」

「ほほーん、にょーん」

 小さい胸の前に腕を組んで、納得したようにラミぃが頷く。

「なるほどなるほどなるほどなるほど。結弦ん、私は大いなる解決のてくにっくを模索してみる結果として、気付いてしまったのだよ」

「ん?」

 つまりはだねぇ、とラミぃは前置きし、


「山なる敵さんを、吹っ飛ばせばどんうぉーりー、だよねぇ?」


 言うが早いか、ラミぃはいつぞやの槍を掌から出現させ、窓に向かって槍投げのごとき構え。

「いやいやいやいやいやいやいやいや!?」

 あわててラミぃを押さえつけるも、「うぎゃー!」と子供じみたはしゃぎ方をするラミぃ。

「私は、あの変な物体おぶじぇくとを更にすなはち観察どんうぉーりー!」

「だからって山を吹っ飛ばしちゃダメだって!」

「ええー! なんでー!」

 不満をもらしながらも、槍を消してくれたラミぃ。一安心しつつ、

「いいかい? 山ってのは、勝手に吹っ飛ばしたり、消し飛ばしたりしちゃいけないのさ。そういうもんなの」

「なんでー!」

「だって、勝手にそんなことしちゃ、地主さんとかにも迷惑でしょ?」

「なんでー!」

「自分の土地が減るからだよ。土地が減ると、その分利益も減っちゃうでしょ?」

「なんでー!」

「それが一番なんでー! だよ! とにかく、そういうもんなの! めっ!」

「ふぇっ……」

 ビシッ! と結界師顔負けの切れ味で私がラミぃの目の前に指2本を振ると、ラミぃは急に弱気そうな声を出す。

 そして、段々瞳が潤んでくる。

「うぇ、うぇ……なんでー……」

「え、え?」

 私が戸惑っていると、ラミぃはついに「うぇぇぇええん」と泣き出してしまった。

「なんでー、なんでー。うぇええええん」

「ああ、もう……と、とにかく泣かないでよ。ほら、ハンカチ」

「うう……ぐすん……」

 私はポケットからハンカチを取り出し、ラミぃの顔を拭いてやる。目からぽろぽろ涙を流しているので、ハンカチが結構濡れた。

「よしよし、もう泣かないでね?」

「うう……」

 ラミぃは少しうつむいてから、小さく頷いてくれた。なんだか小さい子供みたいだ。

 私がラミぃの頭をなでてやると、ちょうど電車はトンネルを抜けて再び眩しい景色が戻ってきた。

 ラミぃが落ち着いたのを確認すると、私は再び窓に視線を移す。

 トンネルに入る前も後も、特に景色は変わらない。緑の向こうに町が見えるだけだ。

「……」

 ふとラミぃに視線をやると、私と同じように窓を見ていた。じっと、普段からは考えられないくらいの無表情で、何かを凝視している。

「……どうしたんだい?」

 私がそっと尋ねると、ラミぃは「結弦ん、あれあれ」と小さく指をさす。

 私はラミぃに顔を寄せて、指先の方向を見る。

「……また見れたじゃん」

「そうだねぇ」

 さっきと同じような青い鳥が、2匹並んで飛んでいた。

今回は自分でも書いてて意味分かんないです。何なんでしょうか。


次回は青嵐さんの出番です。今回は出番がありませんでしたが、ちゃんとありますのでご安心を。

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