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プロローグ「あのひのゆめ」-Part/-3

 また夢の中だ。

 設定や登場人物は一緒、場所も変わらないから日々の生活がマンネリしていると思われるかもしれないが、会話の内容などが細かく変わっていくので、不思議と飽きが来ない。

 私は小さい頃、こんなに人生を楽しんでいたんだな――

 そんな懐かしくもある記憶を、夢というハードで再生する。


『私』は、10歳になっていた。


  ○


「なあなあ」

 いつもの縁側。空は黒く、星もあまり見ることはできない。『私』も彼も厚着をしていることから察するに、どうやら季節は冬のようだ。

『私』は相変わらず今よりは小さい背のままで、いつも通りに彼に話しかけていた。

 彼は少し低くなった声で、「なんだ?」と答える。

『私』は疑問符を3つほど浮かべたような表情で、

「中学校って、楽しいのか?」

「んー?」

 彼は困ったように笑って、

「俺もまだ行った事ないのに、そんなの分かるかよ」

「だって、今度から行くんだろー?」

『私』の長い髪が風で揺れる。彼は一瞬それを見て、

「んー……やっぱり、小学校よりは、忙しいだろうなー」

 そこで少しさびしそうな表情を浮かべ、

「今みたいに、毎日遊ぶっていうのは……」

「そんなぁ……」

『私』はあからさまに肩を落とす。

「私、お前と会えなくなるの、嫌だぞ……」

「会えなくなるってなんだよ」

 彼は笑いながら、

「ただ、勉強とかで忙しくなって、会える日にちがちょっと減るだけだよ。会えなくなる訳じゃねーって」

「……そう、なのか?」

「そうだよ」

 彼は黒い空を見上げて、柔らかく微笑みながら言った。


「俺は、ずっとお前と一緒に遊ぶんだからな」


「……」

『私』はしばし言葉の意味が分からない、という風に目を見開いていたが――

 やがて頬を赤く染めて、うつむきながら言った。

「……私、だって」

「ん?」

「私だって。私だって――お前と、ずっと一緒にいたい」

 ……よくもまあ、私はこんな言葉を言ったものだな。今では考えられないだろう。

 彼もそう考えたのか、とても驚いたような表情をしている。『私』は『私』でうつむいているため、その表情に気付いていない。

 しばしの沈黙の後――

 彼が「あっ」と声を上げた。『私』は驚いたように、反射的に声の主を見た。

「どうした?」

「ホラ、見てみろ」

 彼は空を見上げている。

『私』も彼と同じように、空を見上げると――


「わぁ……」


 しんしん、しんしん……そんな擬音が聞こえてきそうな、幻想的な光景だった。

「雪だ……」

「綺麗だなぁ……」

 夜空からは、小さな小さな白い粒が舞い降りてきていた。雪が降っているのに、空を見れば、星がどんどん数を増やしていっているのが何とも不思議だった。

『私』はその光景にしばし目を奪われ、彼も同じようにそれを見上げている。

 やがて、『私』はいい事を思いついたように、ふふっ、と笑った。

『私』はそっと、彼に身を寄せる。

 彼はそれを見て何かを言いかけたが、『私』がそれを遮るように言った。

「寒い」

「……俺はお前の湯たんぽじゃないんだぞ」

「寒いんだ」

 だから――と、『私』は彼の手をぎゅっと握りしめる。

「……しばらく、こうしていさせてくれ」

「……」

 彼もまた、その手を握り返しながら――

 何も言わずに、『私』の身体を支えてくれた。

「しょうがない奴め」

 最後に負け惜しみのように、そう呟いて笑いながら。


  ○


「あの時は楽しかったな」

 またいつもの白い空間。『私』はそう呟いた。

 ところでお前、いつになったら背が伸びる?

「う……」

 前に見た夢はお前が8歳の頃だが――殆んど伸びてないじゃないか。

「……それ、言うなよ……私だって、気にしてるのに……」

 ははは、気にするな。お前が高校生になっても、悩みは尽きんからな。

「積極的に気にするよ」

 まあ、女は外見じゃない。気にするなって。

「お前の振った話だろうが」

 まあまあ、そう怒るな。美人が遠のくぞ。

「うっさい」

 ははは。本当に面白い奴だな、お前は。

「人生を楽しんでいるからな」

 ……やはり、楽しいか? 彼と遊ぶのは。

「もちろん」

 そうか。

「お前はどうしたいんだ?」

 ?

「また、楽しく遊びたくないのか?」

 出来るならな。

「出来るよ」

 ……本当か?

「私の言う事を聞け」

 ああ、頼むぞ『私』。

「今度、お前の気に言ってる後輩が家に来るだろ」

 ああ。

「それまで待つんだ。チャンスはいくらでもある」

 ……?

「焦ってると、美人が遠のくぞ――なんてな」

 くそ、生意気な小娘が。小娘が。小娘が。

「……小娘を連呼するな」

 小娘小娘小娘小娘。

「あああー!」

『私』は盛大に頭を掻きむしって、そう叫んだ。

 そのせいか知らないが――


  ○


 目が覚めた。

 私は『私』の言葉を思い出しつつ――

「1週間……か」

 カレンダーを見て、そう呟いた。

 私はその1週間――どんな事をして過ごそうか、と考えた。

「……宿題を終わらせておくか。どうせ暇だしな」

 もし、彼と会えたなら。

 目一杯遊ぶのに、宿題なんてものは邪魔でしかないからな。

 プロローグ、第3弾です。

 いい加減に気付いていない人はいないんじゃないかと思うんですが――それでも一応、読んでくれるとありがたいです。

 次回の話については、まだ迷っています……面白い話に書き上げようと思いますので、お楽しみに~。

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