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1…拾った女の子は、非日常式爆弾でした。-Part/δ1

「うー……」

 真っ暗闇のなか、私は立ち止まって周りを見回した。

 辺りには街灯も少なく、ぽつり、ぽつりと頼りなく灯っている白い光が、唯一視界を助けてくれる。

 でも、だからって問題が解決するわけじゃないのにゃ。

「ここ……どこにゃー?」

 もうさっきから何度言ったろうにゃ、この言葉。

 それでも呟かずにはいられかなった、そんな17歳初めての夜。


 私の名前は、白鳥桐葉。

 おしゃれな苗字に、由来もよく分からない桐葉なんて名前を持って生まれてきた、今日から17歳ですっ、の女子高生にゃ。

 今日は、結弦りんが連れてきた後輩とか先生とかと一緒に、学校の屋上でご飯を食べた。その時に、たくさんの流れ星が流れてきて……という、なんだかいろいろありそうな日になったのにゃ。

 で、今はいつもよりだいぶ遅い帰り道についている訳なのだけど……、

「ふぇ~ん。全然、分かんないにゃー」

 ただでさえ方向音痴なのに、ここまで視界が悪いんじゃ、迷うのも仕方ないにゃ。私は誰に対してでもなくため息をつき、立ち止まり続けるわけにもいかないのでとぼとぼと歩くしかできなかった。

「はぁ……いい加減に直したいにゃー、方向音痴……」

 適当に小石を蹴って、私は呟いた。

 しかし、こればっかりはどうしようもないのにゃ。育ちの影響にゃ。


 私は、生まれつき身体が弱かった。

 ありがちかも知れないけど、ずうっと入院しっぱなしで、自分の家で暮らせるようになったのは中学校の時からにゃ。小さい頃から美味しくもない栄養満点の病院食で育ったあげく、150にも届かない身長になってしまった。

 おまけにずっと同じ病院で暮らしていたせいか、道を覚えるという行為が極端に出来なくなっている(病院内の設備はもう感覚で覚えていたから、いちいち思考していなかったにゃ)。御琴りんが毎朝案内してくれるおかげで、学校まではなんとか迷わずに行けているけれど、ひとたび町中に出たりしたらドボンにゃ。

 まあ、こんな私でも御琴りんをはじめとした友達はたくさんいるし、今では学校の生徒会長なんてものまでやらせてもらっている。いろいろと大変だけど、病院での虚無感に包まれた生活よりは、ずうっと充実してるにゃ。

 だけど……

「はあ、はあ……いい加減に、疲れてきたにゃー……」

 もうかれこれ1時間くらいさまよっている。夏とは言え、夜ともなると空気は冷たく、汗のにじんだ制服から強烈な冷気を身体に送り込んでくる。

 これは充実とは言わないにゃ。

「う~、御琴りんに電話しようかにゃ……いや、でもさっきしたばっかりだし……」

 そんな事をぶつぶつと考えながら、記憶にある限りの道を歩く私。ただ暗いだけじゃなく、ぽつぽつと灯っている白い街灯が余計に夜の暗さを強調している。

 これは不気味にゃ。物騒な世の中、私みたいに身体の小さい(=保身能力のない)女の子は、不審者の格好の的だからにゃー。

 はあ……それにしても、疲れたにゃ。

「ふう……」

 とりあえず足を休ませようと、近くに座れる場所がないかを探す。ふと目に入ったのは、夜中でも煌々と輝く光。自動販売機かにゃ、と思ってとりあえず近づいてみる。飲み物を飲むだけでも、体力の回復にはなるからにゃー。

 しばらく歩み寄るうちに、それはどうやら本当に自動販売機らしく、さらにその隣に青いベンチまでご丁寧に設置してあった。これは不幸中の幸い。

「はあ、やっと休めるにゃ……」

 すっかり落ち着いて私はそのベンチに座ろうと、自販機の陰になっているベンチを覗き込んで、

「ん?」

 しばらく固まった。


 そのベンチに、女の人が横になって眠っていた。


「……んん?」

 奇怪な光景に、私は自分のリアクションを忘れてそれをまじまじと眺めた。見れば見るほど、それは現実離れした人だった。

 緑色の長い髪を、ちょうど園崎家次期当主みたいな活発そうなポニーテールにしている。服は白い布地に青いタイとスカートのついたセーラー服で、赤い紐のようなリボンを大きな胸の前で蝶結びしていた。顔立ちも大人っぽいけれど、まだ可愛い、と言った方がしっくりくるような感じだった。背の高さとかも考慮するに、18歳くらいかにゃ。

 そんな女の人が、すうすうとベンチの上で仰向けになって眠っている。

「む……?」

 これは――どうすればいいのかにゃ。

 通報すべきか、起こすべきか、逃げるべきか。選択肢は3つにゃ。

 とりあえず一番有力なのは逃げるコマンドにゃ。私は家に帰らないといけないから、厄介事に巻き込まれるのは勘弁願いたいにゃ。

 あれ、でも道が分からないから……結局、このままじゃ帰るのは絶望的にゃ。そうだ、この人に手伝ってもらえば……いや、それもダメにゃ。知らない人に家の場所を教えるなんて、論外にゃ。

 ここはやはり通報……いや、でもそれも面倒なことになりとそうだし……あ、でも警察なら私を家に送ってくれるかも……。

 私は腕を組んで、女の人の横たわったベンチの前を右往左往。

「むー、これはなかなかの難題にゃ」

 どうしたものか、どうしたものか――1人物思いにふけっていると、


 ガコン! と、足の先で自販機に設置されていたゴミ箱を蹴ってしまう。


「にゃっ!?」

 思わず、大きな音にビックリしてへたり込む。

 それだけではなく……

「……ん、ん?」

「にゃ、にゃにゃにゃ~……」

 さっきの音で驚いたのか、ベンチの女の人もゆっくりと目を覚まし始めていた。

 どどどどどどどうするべきにゃ!? ここはやはり逃げるべきなのかにゃ!? しかし、これで更に家への道のりが遠くなったら……ああああああ。

「ん……うるさいぜよ~……。……?」

 女の人は、アスファルトの地面に座り込んでパニックになっている私を見て、不思議そうに濃い青色の瞳を丸くした。

 視線がぶつかり、しばしの無言。

「………………………………」

 何か、微妙な雰囲気が初対面の2人の間で流れる中で、

「こんばんわ……あの、大丈夫か?」

 などと、女の人が大天使様みたいな挨拶をしてきた。

「えと……まあ、大丈夫にゃ。問題ないにゃ」

「そ、そっか……う~ん……ふわぁ~……」

 女の人は相変わらずベンチに座ったまま、背伸びをして大きく欠伸をした。ズボラな女子大生みたいにゃ。

 私は相変わらずどう反応すれば良いかを思案していると、

「あのさ、ちょっと聞きてーんだけど、いいかな?」

 にっこりとほほ笑みながら、女の人は私に尋ねかけた。

「な、なにか……にゃ?」

 私は何を聞かれるんだろう、と何故かかなり緊張したまま、女の人の質問を待っていた。

 そして、女の人は語り出した。


「白鳥桐葉、って人、知らないか?」

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