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1…拾った女の子は、非日常式爆弾でした。-Part/α1

 夜空を見上げる。

 いつも通りの星空。雲は全く見えず、まさしく七夕って感じがする。

「ん~」

 そんな夜空を見上げて、私は大きく背伸びをした。

「今日はいろいろありましたなぁ。そう思いませんか、結弦さんや」

 自分に言い聞かせたその言葉の後には、何も聞こえない、静寂だけ残った。


 私の名前は、水嶋結弦。今日で16歳。

 いちおー、普通の女子高生……の、つもり。とりたてて変わったことはない思う。

 今日は同じ誕生日の知り合い4人と一緒に、学校の屋上で食事会なんて洒落込んでみたんだけど、そこでたくさん降ってきた流れ星を見た。

「はぁー……今日は何かありそうだなー、と思ってたのに」

 結局、特に何も起こらずに、私はこうして帰り道を1人寂しく帰っているわけだ。

 いつも通りの日常なんて、いつか飽きる……とは、私の先輩の言葉だ。私もつまらない人生なんて送る気はさらさらないので、せめて今日みたいな妙なことがあった日には特別なことが起こってくれてもいいのにー、とか考えていた。

「家に着いたら、何かあるのかな? やっぱり白いシスターさんとか……」

 とまあ、私はこんな感じのことをいつも考えているわけだけど……

 きちんと冗談だと心得ているし、そんな事は起こらないだろう、とも考えている。

「ううー」

 私は少しいらいらしていた。別に身体になにかあるわけではなく、純粋にこの「現実」に。

 もっと面白いことがしたい。

 しかしまあ、実際にラノベみたいなノリでドンパチやったら警察に捕まることは目に見えているし、それを美味くごまかせるような変な組織があるかと聞かれたら「ないっ」とコンマ1秒で答える自信がある。

 だからといって、今の日常が満足か、と言われればそうでもない。

 不満じゃない。むしろ楽しいし、私の親友たちとは一生仲良くしたいとも思っている。でも、そんなのらりくらりとしたマンネリ気味の日常は、私はあまり好きじゃなかった。

「……リア充、死ねっ」

 意味もなく夜空に吐き捨ててみた。住宅街の中で私がはなった声は小さかったけど、誰もいないせいか妙に響いた気がした。

 あー、何か起こらないかなあ、今日のうちに。家が空き巣に入られてるとかは御免だけどね。


  ○


「ごめん申したまわりましー。結弦しゃん、おりたまわりますかねー? ふむふー」

 空き巣みたいな感じの人がいた。

 私は両親と、1歳上の姉が1人いる。

 だけど、両親も姉も仕事で都会に出ていて、今は実質私は1人暮らしみたいなものだ。1階建ての一戸建てで、4人が暮らすにはちょうどいいサイズの家なので、1人では広すぎるくらいだった。

 その、我が水嶋家の玄関のドアを、どむどむと左手でたたく影があった。

「もうしますがー? 結弦さん、いますかにー? いましたら返事をかむおん、なのだよー」

「……なんだろ、アレ」

 とりあえず携帯で時間をチェックした。今は20時38分。新聞の勧誘とかではないだろう。

 少し近づいてみると、その人影の服装がおぼろげに見えた。

 髪は金色。ややウェーブのかかった癖っ毛で、それを頭の右側にまとめておろしている。服装は背中に垂れている四角い布から察するに、セーラー服と言うやつだろう。白いタイに赤いラインがついていて、服の布地は淡い黄色……クリーム色、という感じだった。灰色のプリーツスカートは膝より少し上くらいで、革靴を履いていた。

「もーしもーしー? 返事をうぉんてっど、なのですからにー」

 その女の子(多分)が、私の家のドアをどむどむどむどむどむどむ……と叩きながら、どこかずれている日本語で何かを呼び掛けている。

「結弦・水嶋さぁぁぁーんー? いらっしゃりたまわりましにくるー?」

 ひたすら高い声で私の名前を呼んでいる。

 私はこれ以上叫ばれても近所迷惑かな、と思ってその子に近づいた。

「ねえ、ちょっと君」

「なにかねー?」

 くるっ、と振り返ったその子は、明るい黄緑色……碧色、というのだろうか。そんな瞳をしていた。顔立ちはまだ子供っぽくて、背も140センチ中くらい。13~14歳くらいかな、と直感的に感じた。

 私はきゃはははっ、と笑うその女の子に話を向けた。

「さっきから何してるの?」

「ぬっふふー。よくも聞いてくださりたまわったね」

 妙に自信たっぷりにそんな事を言う。

「実は私は、つい先に刻から結弦んなる人の物を探して三千里……その最果てにこの建物これすなわち目標の家、つまりは自宅と認識賜った次第、そのヒトにおける反応を待ちてこうしてうぇいと、しているわけなのだよー」

「は、はぁ……」

 思わず気圧される。なんだろう、この子の持つ人のものと思えぬオーラ。

「で、先ほどからその人物におけるりあくしょん、を待ち構えておられるわけなのだよー。だかしかし、ずばばーん! 返事がなく、これは我が使役者におけるただの屍のようなのからにー? ちみちみぃ、何かあんのうん、じゃないかい?」

 うーむ、これは困った。

 何を言っているのか全く分からない。言葉てっぺんからつま先まで支離滅裂で、まったく意思疎通が利かない。

「と、とりあえず君は、結弦さんを探しているのかい?」

 言葉言葉の断片から、何となく察してみる。するとその女の子は細い腕を薄い胸の前でゆったりと組んで、

「うむうむうむうむうむうむー。まさしくそのQEDなのですよー。ぱちぱち」

 誰に向けてか拍手をした。なんというか、落ち着きのない子だった。

 しかし今のは何となく意味がわかった。おそらく「まさしくそのとおりなんだよー」と言いたいんだろう。

「じゃあ教えたげる。私が結弦だよ。水嶋結弦」

「ほにょ?」

 妙な声を上げながら首をかしげる女の子。私に左手の人差し指を向けて、

「貴様が水嶋さんちの結弦ちゃん?」

「うん、その通りだよ」

「今日で16歳にたまりけりの?」

「うむうむ」

「次女にあらせらりて……」

「うん。……うん?」

「身長163センチ、体重48キロ、スリーサイズは上から90-57-85の……」

「な、何で知ってるのさ!?」

「にっひひー。女の子の天性の勘、なのですたまりけりー」

「う、うう?」

 ひゃっひゃっ、と心底面白そうに笑うその子は、

「いやははははー。いつの時分にあらせても面白き事だねぇ、ヒトがうろたえるその様子と言うことは」

 などと言っている。

 私はなんだか変な子だなぁ、あと危なっかしい子だなぁとか思いながら、

「ね、ね。君さ。どうして結弦さんを探してたんだい? 何か理由があったのかな?」

「うむう、心差しだして聞けぃ」

 貫禄を出しているつもりなのだろう、女の子が語り始めた。

「私はねぇ、ラミラミって申しけるのだよー」

「ら、らみ……らみらみ?」

 なんだか発音しづらい名前だった。外国人かな?

「そしてねえ、結弦んのことをだうじんぐ、して賜っていたのだよ」

「ダウジング……」

 私ってオーパーツかなんかなのかな? そうか、きっと私の左目にはオリハルコンの原石が埋め込まれていて……なんてね。そんな訳あるかい、と心の中で自分にツッコミしてみたり。

「そんでもったり、私は結弦んのことをがーでぃんぐ、したまりに参りけるのだよ」

「がーでぃんぐ?」

 守る、ガードのことでしょうか。何から?

 そんな疑問を浮かべていると、ラミラミという女の子はずばばーん! と口で言いながらこう告げた。


「何をひどぅん、しつつも。私は結弦んの守護天使にあらせられるのだよー! どどーん、ぱっぱらー」


「……?」

 まずは言葉が分からなかった。だから、驚くのには5秒くらい時間がかかった。

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