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第九話 宮殿広場大騒動①

アイリスに見栄を張って下っ端二人を請け負ったが、俺は苦戦を強いられていた。


「どうした?さっきまでの威勢はよ!」


下っ端の片方、小太りの男が前方から長剣で俺に斬りかかる。

それと同時に、背後から痩せ型の男の長剣が俺を襲う。


「『構築クリエイト』!」


俺は前方を自前の剣で、後方は『変幻自在プロティアン』の『構築クリエイト』の石盾で何とか攻撃を凌ぐ。

立て続けの剣撃に守りに徹することしかできない。


魔獣を倒せたんだ、人間相手なら余裕だろう――そんな俺の見積もりは、開始数分で砕け散った。魔獣の攻撃は本能だが、こいつらの攻撃には『悪意ある知恵』が詰まっている。


下っ端二人のコンビネーションはよくできていて、太型が前衛、細型が隙を見て遊撃と慣れていないとできない連携だ。


次第に俺も押され始め、体に斬り傷が増え始める。


「石ばっか生成しても俺たちには勝てないぜ?」


「はいはい、すみません、ね!」


──『移動速度上昇II』


「ッッ…!」


俺は地面を踏み込み一気に加速、そして太型の間合に入りこみ、腹へ左ストレートをお見舞いする。

ただその豊満な脂肪で衝撃が吸収されたのか、少しヨロけたが倒れることはなく、効果はいまひとつのようだ。


間髪入れずに、細型の長剣が俺の左腕を襲うが『構築クリエイト』で防ぎ、


──『跳躍力上昇I』


その石盾を飛び蹴りで蹴り飛ばし、石盾を細型にぶち当て後方に弾き飛ばした。


「案外、俺戦闘できるんかな、あ、そういえば…」


下っ端らの攻撃が止み、心の余裕を得た俺は、前にサーラさんから教わった『魔法』のことを思い出す。


(『状態開示アクセス・ステータス』)


俺は心の中でそう唱えると、『能力開示アクセス・アビリティ』をした時と同じ、脳に直接情報が流れ込んでくる感覚に襲われた。


_________________________


【状態鑑定:クロノカケル】


能力上昇バフ状況─


『物理攻撃上昇I』・『移動速度上昇II』・『跳躍力上昇I』


__________________________


こんなふうに現在の俺にかかる『能力上昇バフ』がすぐにわかる便利魔法だ。

ちなみに、IとかIIって書いてあるのはただのバフ量の違いらしい。

数字が大きいほどバフの量も多いってわけだな。


すると体勢を直した太型が細型に叫ぶ。


「クソ、こいつ剣も使わず舐めやがって…。おい、デブシ『アレ』を使え!」


「正気ですか?ガリオ。こいつ相手に使うのは勿体無いですよ」


「いいから使え!こんな相手に時間かける方が無駄だ!」


「はぁ…わかりましたよ」


こいつらの名前が絶対に逆な気がするが、大事なのはそれじゃない。

命令を受けた細型が、何やらぶつぶつと唱え始めたのだ。


「あれをほっとくのはマズイか…、けど…」


「ッ…カケル大丈夫?いけそう…?」


すると、横からルイと激闘を続けるアイリスから不安そうな、心配するような声がかかる。

アイリスも大変だろうに、わざわざ心配しにくるのは彼女の優しさの故だろう。


「ちょっと手こずってるけど問題ない!だから俺の心配はしなくていい、ありがとう」


俺はアイリスの不安を払拭するように俺は無理やり笑って親指を立てる。


「けど…」


ただ俺の斬り傷を見てそれがやせ我慢だと気づき、アイリスの表情は未だ重い。


「軽口叩いている余裕はあるのかな?!」


「アイリス!!」


そこに『瞬間移動テレポート』で現れたルイにアイリスが蹴り飛ばされる。

ただ、アイリスも空中で体を捻り流れるように着地。

そして、目にも止まらぬ速さで打ち合わされる剣と剣の、甲高い衝突音が絶え間なく響き始めた。


ほぼ互角、のように見えるが…アイリスの顔が苦しい…。

早く援護に向かいたいが、俺の状況も良くないのが現実だ。


殺してしまう可能性がある『怒りの鉄槌(ギガトン・プレス)』は使えない。

加えて、この広場の整備が行き届いているがために、砂や石を使った『めくらまし』も使えない現状である。


「誰だよ…こんな綺麗にしやがって…」


普段なら出ることのない愚痴が口から溢れる。


ただ今は細型の詠唱、おそらく魔法を止めなくてはならない。

俺は約20個の拳サイズの岩を生成、そして俺の周囲に浮遊させる。


「おいおい…アイツの神素量どうなってんだ、!」


その岩の数の多さに思わず目を見開く下っ端二人。


「『多重岩弾マルチ・ロック・バスター』」


俺の声と同時に無数の岩弾が、詠唱を行う細型に高速で降りかかる。


「おい!詠唱はまだかっ!」


「──我は神の力を欲す。そして我に光の加護を与えたまえ!『閃光の雨(シャイニングレイン)』!!」


詠唱が完了すると、細型の頭上に五個の魔法陣が展開、そして魔法陣から無数の光の弾が、その名の通り雨のように俺に降り注ぐ。


無数の岩弾と降り注ぐ光の雨。二つの魔法が空間でぶつかり合い、爆音と共に暴風のような衝撃波が吹き荒れる。


そして、打ち落とされずに残った岩弾二発と光弾一発がそれぞれに高速で飛来する。


咄嗟に俺は石盾を前方に貼るが──


「「ガハッッ?!」」


視界が真っ白に染まる中、重なり合ったのは「「ガハッッ?!」」という濁った悲鳴。


細型は岩弾を腹と頭部に、俺は石盾を突破した光弾が腹部に直撃した。

俺と細型はその場で崩れるように倒れ込む。


(ま…ずい、な…)


光弾が直撃し、経験したことのない焼けるような痛みに視界が点滅する。

俺は意識が朦朧としながら自分の腹を確認すると、貫通はしていなく、ひどい火傷のように肌が赤く爛れていた。

もし、防御が間に合っていなかったら、俺の腹は貫通し、即死だっただろう。


「カケルーー!!」


遠くからアイリスの心配する声が聞こえる。

ただ痛みで視界が安定せずアイリスの姿までは確認できない。


(ま、だ、アイツが、のこ…てんのに…!)


最悪なことに、太型の方は無傷でまだ動ける状態にある。

そいつの足音が徐々に地面を伝って聞こえてくるのを感じた。


「まだ…死ねな、い…」


一回死んだと思ったが何故か生きていたこの命。

俺は前の世界に帰らなくてはならなかった、家族や友人とまた会うために。

それにアイリスだってまだ戦って・・・


すると、その時だった──


「あーー派手にやっちゃってるな…修理費どうしよう、アクアに怒られるかな」


突如、俺の前に人影ができる。

朦朧とする意識の中で、俺は現れた人物を確認する。


「カケル君、だっけ?もう安心して、大丈夫だから」


その人の中性的な声は、波立った心をなぎへと変える、どこか不思議な安堵感が宿っていた。

視界に映るのは、透き通るような蒼海色の髪。しなやかに流れるミディアムショートの髪筋が、陽光を弾いて淡く輝いている。ラピスラズリを嵌め込んだような瞳に見つめられ、俺はあまりの神々しさに圧倒される感覚に陥った。


(サーラ、さん、じゃない───)


その大海に包まれるような優しい声のせいか、意識が自然と遠のいていって…


そこで、俺の意識は闇の中へと沈んでいったのだった。


次回第10話『宮殿広場大騒動②』です!

お楽しみに〜

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