第三話 『変幻自在《プロティアン》』
俺とサーラさんは水の都に向けて出発した。
数時間歩いた後、日も暮れてきたのでそこで野宿することになった。
「へ〜カケル君のいた世界っていいな、平和で」
「そうですかね、一概に平和とは言えないと思います。戦争しているところもありますし」
俺はサーラさんと晩飯を食べながら互いの世界について雑談していた。
ちなみに今日の晩めしはパンとそこら辺で取れた植物が入ったスープである。
サーラさんが「食べれる食べれる!」ってほいほい採取してた植物だけど、大丈夫なのだろうか…。
「それじゃ、この世界は平和ではないんですか?」
「そ〜だね。国家間での戦争はほとんどないけど、人間の敵対関係にある魔物と悪魔が蔓延ってるから、どの国もそいつらの対策でいっぱいいっぱいなの」
なるほど…、人類共通の敵がいるから人類同士の争いはないけどって感じか。
それにしても、魔物…!それに悪魔!
完全に異世界といったらって単語が並んでいる。てことは…
「…魔王とかっているんですか??」
「うん、いるよ。六体」
「やっぱそうですよ──って六体?!多くないですか?!」
「そうかな?この世界では常識だよ〜。ま、でも正式には五体だけど」
そう言うサーラさんは何か言いたげそうにそわそわしている。
「えーと、なんで五体なんですか?」
「!、よく聞いてくれたね青年。それはね───」
サーラさんは待っていました!と言わんばかりに目を輝かせる。
そこから始まったのは、長々とした武勇伝(という名の自慢話)だ。
簡単に要約すると、魔王の一柱である『愉悦ノ魔王』をサーラさんが倒したらしい。
この人、見た目こそ綺麗だけど、中身はとんでもない「バケモノ」だ。
「──ていう感じね。わかった?」
「…自分がバケモンみたいに強い人に拾われた事は分かりました」
「ちょっとひどくない??人をバケモン扱いするなんて!」
「バケモンですよ…、魔王倒せるんですから…」
「ひどいな〜こんなに美人なお姉さんなのに〜」
(それ自分でいうんだ…)
と、心の中で思わず突っ込んでしまった。
そうして、晩飯を終えた俺たちはテントで休んだ。
ちなみに、テントが一つしかなくサーラさんと同じ場所で寝ることになった。
え、羨ましいって?そりゃあ初めはワクワクでしたよ?
思春期真っ盛りの男子高校生ですもん。
…まぁ、実際はこの人の寝相がひどすぎてそれどころじゃない。
足で顔蹴られるはヨダレたらしてるし・・・。
何か、はじめのサーラさんの神々しさが消えていく感覚に晒される俺であった・・・
翌朝──
俺たちは起き、朝食を軽くすませ目的地に向けて出発する。
そして歩き始めておよそ三時間が経過した。
「そういえば、その『水の都』までどのくらいかかるんですか?」
「ん〜、だいたい歩いて三日ぐらいかな?そんなに遠くないよ」
み、三日?!まぁ近いの、か?現代人で三日も歩くことはないから感覚が狂っている…。異世界恐るべし…。
「ちょっと待って」
すると、突然サーラさんが腕を横に出し俺を制止する。
だが前方には特に異変はない。
「サーラさん?どうしたn──」
突如、頭上が暗くなる。
「上ね」
俺はサーラさんに後方に押し出される。
サーラさんは頭上に現れた何かの攻撃を剣で受け流し弾いた。
「ちっ、勘のいい女だな」
現れたのは若い男二人組だ。格好は所々破れたボロボロの服であり、背の高い男は短刀を両手に持ち、片方の男は何も持っていなかった。
明らかに盗賊って感じの雰囲気だ。
「もーびっくりした〜。何か私たちに用かな?」
こんなときもサーラさんは飄々としていつも通りだ。
「用ってこともねーさ。少ーし金めのもんを渡してくれたらいいって話よ。そうしたら何も害は加えねーぜ」
「そうだぜ??兄貴は優しいからな。言うことを聞くのが吉だぜ??」
やっぱり盗賊かい。まぁ異世界といえばあるあるだけど。
けどまぁ悲しきかな、不運なことにこっちには魔王を倒した人がいるわけで…。
「ん〜それはできないかな!ごめんね!」
サーラさんは手を前に合わせきっぱり断わる。
「ハっハっハ、面白い嬢さんだ」
「あ〜あ、せっかく兄貴が譲渡してくれたのに」
「すごい自信だけど、そのお兄ちゃんが私に勝てると思ってるのかな?」
「ハハ、そうだな。まぁ目的はお前じゃねえけど───」
兄貴分が薄気味悪い笑みを浮かべた瞬間、背筋に氷を押し当てられたような戦慄が走った。
嫌な気配を感じすぐさま振り返る。
(三人目──?!)
そこにはあの男たちの仲間と思われる黒いフードを被った男が短剣を振りかぶっていた。
まずい…、狙いは元から俺だったのか。
あの二人がサーラさんの気を引き、隠れたもう一人が弱者の俺を襲う手段。
完全に手慣れだ。
やばい、サーラさんも二人の相手をして間に合わない。
死を悟った俺は反射的に前に両手に突き出していた。
その時、「キンッッ」という鋭い音が鳴り響く。
サーラさんか…?と前方を確認すると、なぜか俺の手の前に手の平より少し大きい「石の壁」が浮いていた。
「「「は??」」」
男たちが(俺も)予想外の感触に間抜けな声を出していた。
「ガッァ?!」
すぐさまサーラさんがこの男を蹴り飛ばし、男が木に猛スピードで激突する。
「クソがっ、あのガキ能力者かよ!おいお前ら撤退すんぞ!」
「「へ、ヘイ!!」」
その盗賊たちはすぐに森の茂みに逃げてしまったのだった。
俺は安堵したのか足の力が抜けてしまって座り込んでしまった。
「大丈夫カケル君??怪我ない??」
サーラさんが焦った様子で俺を心配していた。
この人でも焦るんだな、と逆に冷静な俺である。
「少し腕に擦り傷ができたぐらいで、多分大丈夫です」
「よかった〜。ちょっと待って、回復させるね」
サーラさんが怪我した部位に手をかざす。
すると、みるみる傷跡が無くなっていき、ほんの数秒でまるで何も無かったかのように元通りになった。
回復魔法なのだろうか?それともスキルとかかな?
「ありがとうございます!助かりました」
「いえいえ、って!それよりも、カケル君って能力持ってたんだ!水臭いな〜早く言ってよ」
水臭いと言われても…、能力ってなんのことだ?
あ、もしかしてさっき盗賊の不意打ちの攻撃を防いだことか?
俺がさっき生成したとされる石の壁は地面に転がっていた。
俺はそれを手にとり確認すると、やはり見た目どうりただの石のようだ。
「これのことですよね?…けど、自分では使った感覚がなくて、なんか勝手に出たって感じです」
「ん〜、まぁ命の危険に晒されたから無意識的に能力が発動した感じかな。能力って持ってる人少ないからラッキーだね!カケル君」
「ラッキーと言われましても…、実際持っている感覚がないです」
そう、持っているとしても使えなければ意味がない。
こうゆうのって能力を得たときに感覚として理解するもんじゃないのか??
「ふ、ふ、ふ、そこでだよカケル君。この世界には便利な魔法があってね、自分の能力を確認できる魔法があるのだよ」
なんだそれ…なんかゲームで自分のステータスを確認する感じかな。
「どうやるんですか?」
「『能力開示』って心の中で唱えてみて」
そんな簡単でいいのか…。
半信半疑ながらも俺は言われた通りに心の中で唱える。
(『能力開示』)
唱えた直後、“情報“が直に脳に流れてくる感覚に襲われた。
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【能力鑑定:クロノカケル】
一:『変幻自在』
【系統】:授与スキル―特殊系
【基本能力】:構築/物質操作
【始原の加護】
:『効率化』⋯このスキルの神素消費量50%削減
: 条件未達成
: 条件未達成
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これが俺の能力なのか?それにしても知らない単語が多い。
ただ──不思議なことに、何となくこの能力について理解した感覚があった俺である。
次回第四話『無茶ぶり特訓』です!
お楽しみに〜




