第二話 出逢い
「……っ」
俺は目を覚ました。
長い夢から目覚めたような感覚だ。
「…って、どうなった?!」
俺は自分の身体を慌てて確認すると、不思議な事に傷一つなかった。
あの速度のトラックに轢かれて無傷なはずが無いんだけど…
それに…、ここどこだ?
周りを見渡せば、そこは薄暗いテントの中だった。俺はテントのジッパーを開けて、外を見てみると…
前 後 左 右、森!森!森!
なんで森にいんだよ?!
さっきまで交差点にいたよな…?
吹っ飛ばされて森まで?ならさすがに死んでるか…。
その時、俺の脳裏にある可能性がよぎる。
「もしかして、これ転生?」
俺は近く水たまりで顔を確認する。
だが、現実は18年間連れ添ってきた見慣れた顔である。
く、テンプレの『イケメンに転生して異世界で無双する』というのはやはりないようだ。
ただ、俺は希望を消さない。まだ異世界転移の線がある。
ただ…実際ここは本当にどこなんだ?
それにこのテント…、誰か俺を助けてくれたのか?
何も情報がない…、もしかしたら助けてくれた人が近くにいるかも?
まぁ、とりあえず情報収集ついでに探索するか。と、思ったその時だった。
「ヴウゥヴウ…」
目の前の茂みが割れ、そいつが現れた。
「デカい…」
俺の背丈の2倍以上(俺は約170cm)の熊のようなバケモンが現れたのだ。
俺の知っている「熊」とは根本的に格が違う。鋼のような毛並み、万物を引き裂けるような凶悪な爪。
そのバケモンと目が合う。
ヤバい、と俺の本能が警鐘を鳴らしていた。
ただ恐怖で俺の足が動かない…。
「ガァアアア!!!」
その咆哮と同時にバケモンの爪が襲う。
喰らったらそれこそ身体ごとイカれそうだ。
こういう異世界に飛ばされた時って何かチートスキルとか持ってないのか?!
確認する時間ぐらいくれよ!普通!
ただ、そんな願いが叶う訳もなく…死を覚悟し目を閉じた。
その時だった。
キンッ!と金属同士がぶつかり合うような、鋭い高音が辺りに響く。
俺は恐る恐る目を開けると、前に立っていたのは一人の若い女性だった。
太陽のように輝く橙色の後ろ髪で、片手には太陽を反射して白く輝く一振りの剣。
その声は、戦場には不釣り合いなほど穏やかだった。
「もう、テントの外には出るなって言ったのに。怪我ない?大丈夫?」
「あ、はい大丈夫です、」
反射的に答えてしまったが、そんなことは一切言われてない気がする。
すると、獲物を邪魔された化け物が、再び腕を振り上げる。
「あ、あぶない!!」
俺は必死に叫ぶも、その心配は不要だった事に気づく。
「ッッガ?!」
閃光。
まったく剣筋が見えなかった。
クマが振りかぶった腕は宙を舞い地面に鈍い音を立てて落ちる。
既に彼女によって斬られていたのだ。それに…
「炎…」
彼女の持つ剣には赤く輝く炎が纏っていた。
「もーあぶないな〜」
危機感など微塵も感じさせない、軽やかな声が響く。
「焔烈斬」
その言葉と同時にクマは縦に真っ二つに斬られた。そしてその巨体は徐々に崩壊していき消滅していったのだった。
正直、俺に剣があったとしても斬れる気がしない、銃でも効かなそうな巨体をまるで豆腐を切るかのように簡単に斬っていた。
この人の方がバケモンのように思えるが見た目はとっっても美人なお姉さんである。
橙色の髪と対照的な吸い込まれそうなほど澄んだアクアブルーの瞳、まるで宝石のようだ。
また華奢でスタイルもよく俺よりも少し背丈が高そう。雪のように白く美しい肌をしており、アニメでしか見ないような美女である。
「えっと、、ありがとうございます‥」
「いーよいーよ!ここらへん魔獣が多いから気をつけなよ?」
あ、はい。そう答えるもどう気をつけたらいいんだって話だけど。
「あ!そういや自己紹介してなかったね。私は『アムレット』の『水翠水神騎士団第三騎士団長』のサーラ=ルミエールです、よろしく!」
サーラ=ルミエール…日本人ではないな。やっぱり異世界にきたってことなのかな、魔獣とか言ってたし。
「よろしくお願いします、あ、俺の名前は黒野翔といいます。えっと、俺をあのテントに入れてくれたのは、、」
「うん私だよ。森の中で君が一人で倒れているところを見つけたんだ。というかカケル君はどこからきたの?こんな森の中にいて」
「えっとそれが・・・」
素直に言うこと以外の言葉が見つからないので、俺は先ほどの推論から『自分は異世界からきたかもしれないこと』をサーラさんに伝えた、がとても疑っている様子だ。
それといちよう俺の住所を言ってみたが知らないようで・・・
「『ニホン』?っていう国は近くにはないかな…。なんかでっち上げてない?適当に言って」
サーラさんが俺をジト目で睨んでくる。
やはり美人のジト目には破壊力があるな、って違う違う。
「違いますって!本当なんです信じてくださいよ!トラックに引かれて死んだとおもったらここで寝てたんです!」
「ふーん…、まぁそうゆうことにしておこう!とりあえず、私の家がある『水の都』に向かおっか。この森危ないし」
「水の都?」
「うん、アムレットっていう国の首都だよ。めっっちゃ街並みが綺麗なんだ〜」
アムレット…、多分知らない国だ。
「分かりました」
とりあえず飢え死にすることも、魔獣に食い殺されることも無くなったかな…。本当によかった、助けがあって。
そうして、サーラさんと俺は『 水の都 』という街に向かって出発したのだった。
次回第三話『変幻自在』です。
お楽しみに〜




