表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/11

第十話 宮殿広場大騒動②

時は大乱闘が始まり、アイリスがカケルの様子を窺った後にまで戻る───



アイリスはカケルと話していたところ、ルイの蹴りをもらってしまい、再び剣撃戦へと場面が移行する。


(カケル、怪我してたし、本当はピンチなんじゃ…)


アイリスの思考にカケルの心配が漂い、離れない。

それもそのはずで、アイリスはカケルがサーラから受けた特訓の内容をほとんど知らない。ただ、姉から聞いたのは、「すこーし、だけ特訓した」という言葉だけだ。


アイリスの思考が少し戦闘から逸れるのを、ルイは見逃さない。


「何か考え事か?懐ガラ空きだぞ?」


「いっ…!」


ルイの右フックがアイリスの腹部に突き刺さる。


──『物理攻撃耐性上昇III』


が、アイリスは優れた瞬発力で咄嗟に『能力上昇バフ』で、ダメージを軽減する。


「…ったいわね!」


「君がいらぬ思考をしてたからだろ?どうせ、あの下民のことでも考えてたに違いないけど」


「…」


アイリスはあまりにも的をいる指摘で何も言い返せなくなる。

ルイの言うことは正しい、戦いの中で他のことに意識を向けるなど自殺行為だからだ。


「もっと私を楽しませろよ?二年前と違って、な!!」


キンッッッ!!


ルイが視界から消え、アイリスの後方から白銀の剣が襲う。

ただ、アイリスもそれは予測していたので、軽く剣で受け流し、反撃でルイを蹴り飛ばす。


「さっきのお返し」


「はっ、そんな脆弱な蹴りで私は倒れたりしないぞ?」


その後も、ルイは攻撃しては『瞬間移動テレポート』、そして攻撃と、繰り返しアイリスを痛ぶるように襲いかかる。


徐々にアイリスの綺麗な服にも傷がつき始める。


彼女は、白のハイネックに黒のショートジャケットを羽織っており、ジャケットの縁にあしらわれた白いラインが、全体の印象をキリっと引き締めている。

目を引くのは、鮮やかなロイヤルブルーのミニスカートで、フロントに並んだ金色の飾りボタンが、どこか制服のような気品を漂わせていて高級感があった。


その服に傷がついたことにアイリスは少し顔をしかめる。

これは最近買った服であり、アイリスのお気に入りだったからである。


(こんな戦闘になるなら着てこなきゃよかった…)


ルイの攻撃はそれを感傷に浸ることすら許さない。


「へー、案外耐えるんだね?前は『瞬間移動テレポート』に手も足も出なかったのに」


「そうね、私は成長してるから。あなたと違って」


「チっ、あの何もできなかった雑魚が!」


予想外の皮肉が返ってき、ルイの眉根が深く寄る。




実際にルイとアイリスは二年前に戦っている。


その時のアイリスに勝てるものは同世代の者でいなかった、というか年上でも勝てる者は少ない、そのぐらいにアイリスは強かった。

魔王を倒した英雄:サーラ=ルミエールの妹といえば誰もがその強さに納得する、

“才能”があるのだと。


しかし、二年前突然現れた、無名の青年:ルイ=サルバートに成す術なく破れてしまった。


攻撃を一回も当てることすら叶わずに・・・。




しかし、今のアイリスは『瞬間移動テレポート』のある“特性“に気づいていた。


瞬間移動する先で、微かに神素力が揺らいでいる──


常人には気づくことができないほどの小さな変化。

それに気づくアイリスの観察眼のセンスが光っていた。

そこにアイリスの強さが現れている。


カケルのように一般人からして見れば、突然消え、どこに現れるのかもわからない相手の攻撃を防がないといけない、という無理難題。


ただ、瞬間移動する場所さえわかれば、対策は練れるというもの。

アイリスはその小さな“揺らぎ”を感知、そして予測して防御、を徹底する。

その戦闘センスで、アイリスはルイとの戦いを成立できていた。


だが──


(だけど、これじゃ私が攻撃できなくてジリ貧で負ける…、)


それも現実であった。

攻撃が当たらなければ勝とうにも勝てない。

加えて、攻撃することにアイリスの性分が邪魔をしていた。


大怪我をさせたくない。


アイリスの優しさゆえの思いだろう。

普通に考えて、このルイのアイリスにした暴言や暴力を考慮すれば、ルイを痛い目に合わせてもいいと思うが、アイリスの優しさはそれを許さない。


ルイは本気でアイリスを殺そうとしてないことは、痛みつけて楽しむ様子から容易に分かる。


ただ、アイリスは、本気を出せば勝てる可能性は十分にあると踏んでいた。

それは、もう一つの“特性”に気づいていたからで───


アイリスとルイの攻防が激しさを増していたその時、突然二人の剣が止まった。

カケル達が戦っている方角から、膨大な神素力の乱れを察したからだ。


「あれは…『神素魔法』!?」


細型が展開する魔法陣に驚きを隠せないアイリスが叫ぶ。


「あいつら…あの下民に使うほどでもないだろうに。というかアイツも能力持ちか、だが、あの石ころじゃ死ぬだろうな」


「ルイ!あれを止めて!!このままじゃカケルが死んじゃう!一般人相手に『神素魔法』なんてやりすぎよ!」


「別に死んでも構わないさ、俺にあんな恥をかかせたゴミなど」


「っっ!」


アイリスはルイを無視してカケルの方へと駆け出す。

だが、それをルイが許さない。


「邪魔するのは野暮だろ?私たちは私たちで戦わないと」


アイリスの前に瞬間移動してきたルイが立ちはだかる。


「…どいて、これ以上は見過ごせない」


アイリスの瞳から温度が消える。白銀の剣の腹を指先でなぞれば、そこから爆発的な橙色の炎が噴き出し、刀身を陽炎のように包み込んだ。


アイリスの本気だった。


「やっと本気の目、か」


ルイもまた、その圧に応えるように剣を掲げると、不可視の神素力が刃に収束し、純白の燐光が剣を覆った。


──『移動速度上昇IV』


アイリスは、地を蹴り、全速力でルイへと走り出す。

その速度は、魔獣と戦っていたカケルよりも数倍速い。


「全力でお前を潰す!!一生『英雄のなりぞこない』として生きろ!」


ルイが完全なる勝利をし、アイリスという『才能』を否定するために──


ルイの咆哮。アイリスの刃が届く直前、ルイの姿が掻き消える。

次の瞬間、アイリスの死角――その背後の空間に、ルイが冷笑と共に現れた。


「もらった───は?」


勝利を確信したはずのルイの視界が、赤く染まる。

振り下ろされるはずだったルイの剣より早く、アイリスの炎が彼の胸元を真横に斬り裂いていた。


予想外の痛みに襲われ、地面に膝をつく。

胸元の斬り裂かれた傷から紅の血が地面に滴る。


(フェイント…???)


ルイが今起きたことに気づいた。

前方への突進はフェイント。アイリスは、ルイが「背後を取る」という選択をすること、そしてその「出現位置」を完璧に読み切り、後ろ向きのまま最短の軌道で刃を逆流させたのだ。


全て読まれていた。


「クソ、尼ぁぁ…!!」


威勢も虚しく、地面に倒れ込むルイ。

アイリスは即座にカケルを助けに向かうが・・・一歩遅かった。


「っカケルーー!!」


降り注ぐ光の雨の雫が、カケルを貫いた。







そして現在──


透き通るような蒼海色の髪、しなやかに流れるミディアムショートの美青年が、倒れるカケルの前に立ち、広場を見渡すその青い双眸は、宝石のように澄み渡りながらも、鋭い光を宿していた。


その瞬間、世界から音が消えた。

広場にいる全員の動きが止まり、広場に静寂が訪れる。


誰もが、その青髪の青年の圧倒的なオーラに息を呑んだからだ。


「……ひどいな」


青年の、慈愛と静かな怒りが混じり合う声が、静まり返った広場に木霊した。


次回第十一話『始原ノ青』です!

お楽しみに~

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ