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我が家の長男(50歳)~大人の顔した子ども~  作者: オレンジ


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2/12

手加減という言葉を知らない

いい内容だよ、おもしろい。ただ、卓球をやっていたのは自宅じゃなくて、休日無料開放している体育館なの。


いいところに気づいたね。

場所が体育館になるだけで、空気が一段リアルになるし、夫の“外向きの顔”も少し混ざって、さらにおもしろくなる。


じゃあ、内容はほぼそのまま、

舞台だけを「休日無料開放の体育館」に置き換えて、整え直すね。


第2話「手加減という言葉を知らない」(体育館版・改稿)


長男が卓球にハマったのは、中学生になってからだった。


きっかけは、休日に無料開放している近所の体育館だ。

特別な予定のない日、

「ちょっと体動かすか」という軽いノリで行く場所。


卓球台が並ぶ一角で、

ラケットを持つのは、夫と長男。


最初のころは、いつも夫が勝っていた。

別にうまいわけじゃない。

私のほうが、たぶん少しはうまい。

そう言うと、夫はすぐ否定するから、口には出さないけれど。


ただ、大人で、体力があって、遠慮がない。

それだけで、小学生までは十分だった。


「ほら」

「まだまだだな」


長男は悔しそうにしながらも、楽しそうだった。

体育館の広い空間も相まって、

その時間はまだ“遊び”だった。


変わったのは、中学生になってから。


YouTubeでサーブの打ち方を調べ、

回転のかけ方を真似して、

家でも素振りをするようになった。


同じ体育館。

同じ卓球台。


なのに、球の動きが変わった。


「……今の何?」


夫の声が、少しだけ低くなる。


サーブが読めない。

返ってくる球に回転がかかっている。

ラリーが続かない。


気づけば、夫は勝てなくなっていた。


「もう俺には勝てないよ」


長男は少し誇らしげに言った。

体育館の天井を見上げるような、自慢げな顔で。


夫は、間を置かずに言った。


「そんなに練習する時間ないし」

「そんなに練習してんなら、勝って当たり前だろ」


……そう来たか。


努力は、

自分がしていないときだけ、価値が下がる。


周りでは、知らない親子が楽しそうに打ち合っている。

子どもに教えながら、笑っている父親もいる。


長男はそれ以上何も言わず、

ラケットを軽く振って汗を拭いた。


それから、夫は卓球をやらなくなった。


体育館に行っても、

「見てるわ」とベンチに座る。


勝てない勝負は、しない。

それもまた、一貫している。


今、夫が相手にするのは次男だ。

まだ勝てるから。


長男は、空いた台で私と打ち合う。

「ママ、意外と返すね」と笑う。


手加減という言葉を知らない人は、

勝てる相手としか、勝負をしない。


体育館の明るい床の上で、

私はそれを、静かに見ている。



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