相手は小学生
夕食が終わって、食卓が片付くころ。
我が家の団らん時間は、だいたい夜だ。
テーブルを拭くのも、カードを持ってくるのも、並べるのも子どもたち。
夫はすでにビールを飲んでいる。
団らんとは、そこに座っていることだと、この人は思っているらしい。
「ウノやろう」
子どもが言うと、もう一人がすぐにカードを取りに行く。
楽しそうだ。
夫はゆっくりグラスを置き、「いいよ」と言う。
カードを切るのは子どもだ。
「ちょっと待って。切り方、甘くないか?」
「それじゃ偏るだろ」
言われながらも、子どもは笑ってカードを切り直す。
それでも楽しそうだ。
まだ、この時間を“遊び”だと思っている。
ゲームが始まる。
「今それ出す?」
「相手の持ち札、考えてないからわからないんだよ」
子どもは一瞬考え、顔を見合わせてからカードを出す。
うまくいったときは、小さく拳を握って喜ぶ。
ワイルドカード。
「それ、今のルールだろ」
「昔は違ったけどな」
夫はそう言いながら、しっかり今のルールで勝ちにいく。
先に上がったのは夫だった。
「よし」
声は小さいが、顔は誇らしげだ。
子どもたちは悔しそうにしながらも、
「もう一回!」と声をそろえる。
次のゲーム。
今度は子どもが先にカードを出し切った。
「やった!」
思わず立ち上がって、ガッツポーズ。
二人で顔を見合わせて笑う。
その瞬間だけ、部屋がちゃんと明るくなる。
夫は一拍置いて言う。
「まあ、酒入ってるからな」
「シラフだったら違ったけど」
……その言葉を、子どもたちは聞いていない。
勝った余韻に浸っている。
「もう一回やろうよ!」
カードを集めるのも、片付けるのも、やっぱり子どもたちだ。
夫はグラスを持ったまま、次の勝負を待っている。
我が家の夜は、だいたいこんな感じだ。
楽しんでいるのは、確かにみんな。
ただし温度差がある。
一番はしゃいでいるのは子どもたちで、
一番勝ちにこだわっているのは、
一番年上の人だった。




