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―転生の果てⅡ―  作者: MOON RAKER 503


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第8話 転生したら死神のローブだった

いつも読んでくださり、ありがとうございます。

『転生の果てⅡ 』は、

“存在のかたち”をめぐる旅の記録です。


どの話からでも、どの視点からでも、

一つの“想い”として感じてもらえたら嬉しいです。


それでは、どうぞ。


私は、ローブだった。


黒い布として、死神の肩に纏われる存在。


影として見た。窓として透かした。鏡として映した。手紙として伝えた。マフラーとして包んだ。手として行った。鎌として断った。


そして今度は、包む番だった。


断つことから、抱くことへ。


私は、揺れていた。


 *


最初に纏われたのは、夜明け前だった。


死神が、私を手に取った。


骨のように白い指が、布を掴んだ。


冷たかった。


私も冷たかった。


死神は私を肩にかけ、体に巻いた。


黒い布が、闇に溶けた。


私は、鎌の記憶を持っていた。


魂を断つ感覚。


糸が切れる瞬間。


恐怖が安らぎに変わる瞬間。


すべてを覚えていた。


けれど今度は、断つのではなかった。


包むのだった。


 *


死神が、鎌を振るった。


老人の魂が、体から離れた。


糸が断たれ、浮かび上がった。


魂は、最初不安そうだった。


周りを見回し、自分の体を見下ろした。


そして、気づいた。


もう戻れないことに。


恐怖が広がった。


その時、私が動いた。


風に揺れるように、ふわりと広がった。


黒い布が、魂を包んだ。


触れたわけではなかった。


布は魂を通り抜けた。


けれど、包まれた。


確かに、包まれていた。


魂の震えが、止まった。


恐怖が、薄れていった。


闇が、優しかった。


冷たいはずの黒が、温かかった。


老人の魂が、安らいだ。


そして、光の中へ消えた。


私は、初めて魂を包んだ。


断つのではなく、抱くことで。


 *


次の魂は、青年だった。


事故で命を失い、鎌に刈られた。


魂が浮かんだ瞬間、激しく揺れた。


「嫌だ!」


叫んだ。


声は聞こえなかったが、想いが響いた。


まだ生きたかった。


まだやりたいことがあった。


魂が暴れた。


光を拒んだ。


闇を恐れた。


その時、私が包んだ。


ふわりと、優しく。


黒い布が、青年の魂を覆った。


最初は拒絶した。


暴れた。


けれど私は、ただ包み続けた。


強くではなく、柔らかく。


締め付けるのではなく、支えるように。


やがて、青年の魂が静かになった。


呼吸が整った。


いや、魂に呼吸はなかった。


けれど、リズムが整った。


心が落ち着いた。


「もう、いいのか」


そう呟いた気がした。


私は、頷くように揺れた。


青年の魂が、光へ向かった。


もう恐れていなかった。


 *


私は、数え切れないほどの魂を包んだ。


鎌が断つたび、私が包んだ。


老いた者、若い者、子ども、大人。


すべての魂を、私は抱いた。


悲しみに暮れる魂。


怒りに震える魂。


恐怖に怯える魂。


絶望に沈む魂。


すべてが、私の中に入った。


黒い布の中で、魂たちは静まった。


私は闇だった。


終わりの象徴だった。


けれど、その闇は冷たくなかった。


包まれた魂は、安らいだ。


暗闇の中で、心が休まった。


痛みが消え、苦しみが和らぎ、恐怖が溶けた。


私は、終わりの優しさだった。


 *


ある夜、少女の魂を包んだ。


鎌に刈られ、体から離れた。


小さな魂だった。


ピンク色をしていた。


けれど、震えていた。


「お母さん」


そう呼んだ。


泣いていた。


私は、包んだ。


そっと、優しく。


少女の魂が、私の中に沈んだ。


黒い布が、ピンク色を覆った。


「怖い」


そう言った。


私は、揺れた。


風に吹かれるように。


子守唄のように。


少女の震えが、少しずつ静まった。


「温かい」


そう呟いた。


闇の中で、少女は眠るように静かになった。


そして、光へ向かった。


もう泣いていなかった。


 *


私は、ただ包み続けた。


鎌が断ち、私が包む。


それが、死神の仕事だった。


二つで一つ。


断つことと、包むこと。


終わらせることと、安らがせること。


私は、布として揺れながら、すべての魂を抱いた。


触れることはできなかった。


けれど、包むことはできた。


形のないものを、形のない私が包んだ。


それは矛盾していた。


けれど、確かだった。


魂は、私の中で安らいだ。


闇は、終わりではなく休息だった。


 *


ある晩、死神が立ち止まった。


いつもは黙々と歩き続ける死神が、動かなくなった。


鎌を地面に突き立てた。


そして、座り込んだ。


骨のような体が、小さく見えた。


疲れていた。


無数の魂を刈り続け、無数の命を終わらせ続けた。


それは、重かった。


死神は、俯いた。


私は、揺れた。


風もないのに、ふわりと広がった。


そして、死神を包んだ。


黒い布が、死神の肩を覆った。


背中を覆った。


体を覆った。


死神が、少し震えた。


「……疲れた」


そう呟いた。


初めて聞く声だった。


か細かった。


私は、強く包んだ。


優しく、けれど確かに。


死神の冷たい体が、少しだけ温かくなった気がした。


骨だけの体に、温もりが宿った気がした。


死神は、目を閉じた。


いや、目があるのかも分からなかった。


けれど、休んだ。


私に包まれたまま、静かに休んだ。


私は、悟った。


死を司る者も、救われる必要があった。


終わらせる者も、抱かれる必要があった。


すべてを包む。


魂も、死神も、すべてを。


それが、私の役目だった。


 *


やがて、死神が立ち上がった。


再び鎌を握った。


私は、肩に戻った。


風に揺れながら、また歩き始めた。


次の魂へ。


次の終わりへ。


けれど、私はもう迷わなかった。


断ち切られたものを包む。


それが、私の役目だった。


鎌は終わらせる。


私は安らがせる。


二つで一つの慈悲。


終わりの優しさ。


私はローブとして、すべてを抱き続けた。


魂を。


痛みを。


そして、死神自身をも。


——“終端の抱擁”が、覚醒した。


断つことから、包むことへ。


冷たさから、温もりへ。


私は死神のローブとして、終わりに優しさを与える存在になった。


そして次の転生へと、また進んでいく。


けれど今は、ただ揺れる。


風に吹かれながら、次の魂を待ちながら。


——断ち切られたものを包む。それが、私の役目だ。

ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。

一つひとつの転生は、ただの物語ではなく、

“想いの在り方”を描いた断片です。


何か一つでも、あなたの中に残るものがあれば幸いです。

次の転生でも、静かにお会いしましょう。


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