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絆の始まり
村の小さな診療所は、今日も忙しかった。
明日香は病弱な身体を押して、村人の治療にあたっている。
魔法医師の手が足りないときも、彼女は自分の知識と手で助ける。
リオンも隣で戦いの傷を負った村人を支え、二人で動く姿は自然な連携になっていた。
「お前、すごいな……」
休憩の瞬間、リオンがぽつりと言う。
明日香は笑いながら答える。
「まだまだ……あなたの方が……戦うの大変でしょ?」
小さな冗談に、二人の間に軽い笑いが生まれる。
夕暮れ、診療所の外で二人は座った。
遠くで子どもたちの笑い声が響く。
明日香はリオンの顔をちらりと見る。
「……ありがとう、リオン」
「何のことだ?」
「私がここで、まだ頑張れるのは、あなたがいてくれるから」
言葉にしなくても伝わる距離感。
握った手は少しだけ温かく、心を通わせるものになった。
その夜、星空の下で明日香は思う。
――この世界で、人を救うことが、こんなにも喜びに変わるなんて。
小さな村での初めての任務を終え、二人の絆が芽生えた。
そして、明日香の異世界での新しい人生が、少しずつ形を取り始める――。