夜の密談
夜の帳が降り、ギルド本部の一室に灯された蝋燭の光。
そこに集まったのは、私とリオ、ギルド長レオニード、そして仲間たちだった。
昼間の喧騒が嘘のように静かな空間に、緊張が張りつめている。
「……さて、本題に入ろう」
レオニードの低い声が響く。
机の上に広げられた地図には、王都へと続く街道や要所が赤い印で示されていた。
「教会が動き出した。医療改革を妨げるためにな」
その言葉に、空気が一層重くなる。
真っ先に声を上げたのは、戦士のガイルだった。
「チッ……結局、力で抑え込もうって魂胆かよ。人の命を盾にするなんざ、許せねぇ!」
机を拳で叩く音が響く。
対して、治癒術師のセリナは顔を伏せ、震える声を漏らした。
「でも……教会を敵に回すなんて、本当にやっていけるの?
わたしたちなんて、一瞬で潰されちゃうかもしれない……」
「セリナ……」
彼女を気遣うように声をかけたのは、鍛冶師のカイルだった。
「怖いのは俺だって同じさ。だけど、ここで立ち止まったら――また大切な人を救えなくなる」
互いの想いがぶつかり合い、部屋の空気は熱を帯びていく。
私は思わず立ち上がり、声を張った。
「みんな……ありがとう。怖くても、不安でも、こうして集まって想いをぶつけてくれることが、私にはすごく力になる」
胸に手を当て、言葉を続ける。
「どんなに強い相手でも、私たちが一緒ならきっと乗り越えられる。だから――力を貸して」
その瞬間、リオが笑みを浮かべて私の肩に手を置いた。
「俺は最初からそのつもりだ。……なぁ、みんな?」
ガイルは大きく頷き、カイルも口角を上げる。
セリナは涙を拭いながら、震える声で言った。
「……うん。わたしも、一緒に戦う」
蝋燭の炎が揺れ、影が壁に大きく映る。
その影は――まるで一つに重なり合い、強い絆の証のように見えた。
こうして私たちは、嵐の前夜に心をひとつにしたのだった。