病弱な身体との戦い
異世界での生活にも少しずつ慣れ始めた明日香だったが、身体の弱さは隠せなかった。
寝不足、空腹、そして元々の虚弱体質――全てが重なり、朝から頭が重く、手足は鉛のように感じられる。
「……あぁ、動けない……」
ベッドに倒れ込む明日香。
目の前には、昨夜の傷を負ったリオンが心配そうに立っていた。
「明日香、大丈夫か?」
「大丈夫……ちょっと、休めば……」
声はかすれ、震えていた。
けれど、外からは悲鳴や叫び声が聞こえる。村のどこかで人が苦しんでいる――。
体は言うことを聞かない。
けれど、心は諦めない。
「……やらなきゃ……」
明日香は力を振り絞り、立ち上がる。
リオンがそっと手を差し伸べた。
「無理するな、俺がついてる」
その言葉に、胸が熱くなる。
小さな手で握り返すと、リオンの目が少しだけ柔らかくなる。
弱い自分――それでも、看護師として、人を救う使命。
それを思い出すと、身体の痛みも少しだけ和らぐ気がした。
彼女は再び立ち上がり、魔法医師たちの元へ向かった。
傷ついた人々のために、病弱な身体を押して進む――それが、明日香の異世界での最初の試練だった。