夜空に潜む想い、近くで感じる鼓動
の診療所は、静かだけどどこか胸が高鳴る空気に包まれていた。
外では月が柔らかく光を落とし、窓の向こうには星が瞬く。
リリアは薬棚の整理をしながら、微かに身体の疲れを感じる。
でも、その手は止まらない。目の前の小さな命を守るため、仲間を守るため。
胸の奥で、誰にも言えない想いがそっと芽生える――
クロードが静かに隣に来て、声を低く囁いた。
「…無理するな」
リリアは顔を上げ、驚いたように見つめる。
「……大丈夫。少しだけ、休むだけだから」
声は震えているけれど、瞳には覚悟が宿る。
手が触れそうで触れない距離に、二人の鼓動が互いに響く。
月明かりに照らされるその瞳の奥で、リリアは小さく息をつき、心の中で誓った。
――この温もりを、絶対に失わせない。
遠くから、カイルとセリナの笑い声が聞こえる。
その無邪気な声に、二人は思わず笑みを浮かべる。
クロードは微かに肩をすくめ、リリアの視線を一瞬だけ受け止める。
胸の奥で、二人の心がほんの少し近づく感覚がした。
屋上に上がると、夜風が二人の髪をそっと揺らす。
「……君と、こうしている時間が、もっと続けばいいのに」
クロードの囁きに、リリアは小さく頷き、目を閉じる。
指先が触れ合い、心臓がぎゅっと跳ねる。
その瞬間、リリアの胸の奥に小さな温かさが広がった。
戦いの緊張や、命を削る覚悟を一瞬忘れて、ただ、近くで感じる鼓動に胸が震える。
「……守るから。絶対に」
リリアが小声でつぶやくと、クロードはそっと手を握り返す。
夜空の下、二人の影が寄り添い、静かだけど確かな温もりが満ちていた。