影を裂く光、守る誓い
朝の光に包まれた診療所。昨日までの戦いが夢のように穏やかに思えた。
リリアは患者たちの手当をしながら、仲間たちの笑顔に目を細める。
カイルは冗談を言いながら食材を切り、セリナはお茶を運ぶ。クロードは剣を磨きつつ、静かに窓の外を見つめていた。
しかし、その平和は長くは続かなかった。
午後、診療所の扉が大きく叩かれ、見慣れぬ黒装束の使者が現れる。
「ギルドより……通達です。リリア様、あなたの行動を調査せよとの命が下りました」
その声は冷たく、重く、診療所の空気を一瞬で変えた。
リリアは胸の奥で小さな痛みを感じる。
――光の代償が、まだ体に残っているのに。
「……私のことを、まだ監視しているの……?」
クロードが彼女の肩に手を置き、無言で守る姿勢を示す。
リリアは微笑むが、瞳の奥には小さな不安が揺れていた。
使者はさらに告げる。
「ギルドは、あなたの力を手に入れようとしている。我々の命令に従わぬなら……排除対象です」
その言葉に、カイルが前に出た。
「ふざけんな!俺たちはリリアを守る!絶対に渡さない!」
セリナも弓を構え、震える声で言う。
「誰も傷つけさせない……!」
リリアはそっと手を胸に当てる。
――この力を使えば、また命が削られる。
でも、仲間を守るためなら――止めることはできない。
彼女は深く息を吸い、瞳を強く光らせた。
小さな光が手のひらに宿り、まるで昨日の奇跡を再び呼び起こすかのように輝く。
仲間たちがその光を頼もしく見つめ、リリアの秘密を知らずとも全力で支える。
診療所の静かな午後は、再び緊張感と覚悟に包まれた。
リリアの胸の奥には、小さくて重い秘密――
光を使うたび命が削られること。
誰も知らない、その事実を抱えながらも、彼女は仲間を守る誓いを新たにした。