不思議な魔術と医療の差
リオンの傷が落ち着いた翌朝、明日香は村の小さな診療所を訪れた。
そこには、彼女が知る「看護」とは少し違う光景が広がっていた。
魔法陣が床に描かれ、呪文を唱えながら傷を癒す医者たち。
薬草を混ぜたスープを飲ませるだけで、子どもの熱は下がるという。
「……これが、異世界の医療……」
明日香は息を飲む。便利だけれど、何かが足りない。
手際は良いが、患者の痛みや不安に寄り添う時間は少ないように見えた。
小さな女の子が泣きながら来院する。
彼女の手を握る魔法医師の指は冷たく、心配そうな表情もない。
明日香はそっと膝をつき、女の子の目を覗き込んだ。
「大丈夫、怖くないよ。私がそばにいるから」
現代での経験が体に染みついている。
女の子は涙を止め、少しだけ安心した表情を浮かべた。
そのとき、魔法医師が明日香に目を留めた。
「……お前、普通の手で治療してるのか?」
「はい。でも、痛がる人には寄り添わないと……」
答えながら、明日香は自分の使命を再確認する。
魔法は確かに便利だ。
でも、患者の気持ちを理解し、手で触れて寄り添うこと――それが、現代の看護の力だ。
明日香は決めた。
「ここでも、絶対に人を救う――現代の知識と心で」
その瞬間、村の遠くから悲鳴が聞こえた。
新たな試練が、彼女を待っている――