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医者ギルドの影

臨時施設の扉がきしむ音を立てて開いた。

 黒いローブを纏った男たち──医師ギルドの使者が、威圧的な足取りで入ってくる。


「貴様……何者だ? 資格も持たぬ少女が治療など……」

 ギルドの長と思しき人物が、冷たい目でリリアを睨む。


「私はリリア。元・看護師です。ここで患者を救う!」

 声を震わせず、はっきりと答えるリリア。


 ギルドの男たちは鼻で笑った。

「看護師? 知識だけで命を扱えると思うのか。王国の医療秩序を乱すとは、傲慢な……」



 だが、施設内の患者たちは言葉に出さずとも視線を向ける。

 咳き込み、体を横たえたまま、しかし確かに“救われている”現実を。


 リリアは目を閉じて心の中で整理した。

(理屈はどうあれ、目の前の命を守るのが先! 説得するより救うんだ)


 彼女は仲間たちに静かに指示を出す。

「セリナ、患者の手当を最優先。クロード、魔法で支援して!

 カイル、施設の外周を固めて!」


 仲間たちは即座に動き、ギルドの妨害を最小限に抑える。

 患者たちが少しずつ回復していく光景に、リリアの心は揺るぎない決意で満たされる。



 ギルドの長は苛立ち、手を振る。

「王都に報告する。少女ごときに国民の命を預けるわけにはいかぬ!」


 その言葉に、市民や患者の家族たちが怒りの声を上げた。

「この人が私たちを助けてくれたんだ!」

「命を救ってくれるなら、資格なんて関係ない!」


 現場の熱気がギルドを押し戻す。

 リリアはその光景を見て、微笑んだ。

(仲間と市民が力を合わせれば、どんな妨害も跳ね返せる)



 しかし、ギルドの脅威はまだ終わらない。

 使者たちは後方に控える魔術師や暗殺者を呼び寄せており、リリアたちは「次の一手」を迫られることになる。


 夜、施設の屋上でリリアは月を見上げる。

「まだ……これからだ」

 彼女の瞳には、確かな決意と少しの不安が混じっていた。


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