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王国全土に広がる声

ユイが始めた医療改革は、王都や北部の村を超えて、王国全土へと広がり始めていた。

 各地から「手洗いを教えてほしい」「看護の方法を学びたい」と使者がやってくる。


 だがそれは同時に、王国の政治にも影響を及ぼしていた。

 病や怪我の治療を独占してきた一部の医師ギルド、そして癒しの奇跡を司ってきた教会――彼らにとって、ユイの活動は“既存の力を揺るがすもの”だったのだ。



 王城の謁見の間。

 国王レオナルド三世は深刻な表情で、ユイを呼び寄せた。


「ユイ、そなたの活動は確かに民を救っておる。しかし――医師ギルドや教会から強い反発が来ておるのだ」


「……反発?」

 ユイの胸に不安が広がる。


 隣でリオンが一歩前に出る。

「王よ、ユイの活動は正義そのもの。民が救われているのは紛れもない事実です。反発する者は己の利権を守りたいだけでしょう」


 しかし、王は渋い顔をした。

「それでも、国を治めるには“力の均衡”が必要なのだ。そなたに全てを任せれば、教会もギルドも黙ってはおらぬ」



 会議が終わった後、ユイは深く息を吐いた。

 セレスティア王女がそっと寄り添う。


「ユイ、あなたのやろうとしていることは間違っていないわ。でも、大きな理想を叶えるには“味方を増やす”必要があるの」


「味方……」

 ユイは小さく呟く。


 そのとき、セリナが駆け込んできた。

「ユイさん! 南部の大都市で疫病が流行っているって! ものすごい速さで広がってるらしいんです!」


 場の空気が一瞬で張り詰める。


「疫病……?」

 ユイの胸が早鐘のように打つ。

 それは、彼女が前世で恐れ、必死で立ち向かってきたもの。

 人を無差別に奪う、見えない敵。


 リオンがユイの肩に手を置き、静かに言った。

「ユイ。行こう。俺たちで止めるんだ」


 ユイは拳を強く握りしめ、頷いた。

「……うん。絶対に、諦めない。私たちの看護で、人々を守る!」

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