未来への1歩
王都から地方、そして北部・南部の村々まで――ユイとチームの医療改革は少しずつ広がりを見せていた。
村人たちは、自分たちで清潔を保ち、簡単な手当を行い、患者を観察するようになっている。
子どもたちは、ユイが教えた手洗いや簡単な応急手当を楽しそうに実践していた。
老人たちも、布を清潔に保つ習慣を覚え、村全体の健康意識が変わってきたのだ。
ユイはある朝、リオンと共に北部の村を巡回していた。
咲き誇る花の下で、村人たちが笑顔で暮らす姿に、胸が熱くなる。
「……やっと、少しだけど形になったね」
リオンがそっとつぶやく。
「ええ。でもこれはまだ始まり。これからもっと多くの村を守らなきゃ」
ユイの瞳は、未来を見据えて輝いていた。
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王都に戻ると、国王レオナルド三世とセレスティア王女が待っていた。
王都全体での医療改革の進捗を報告するユイに、二人は深く頷く。
「ユイ殿、君の働きで、多くの命が救われた。王国は、君に感謝している」
国王の声には、敬意と信頼が込められていた。
「でも、私はまだやることが残っています」
ユイは真剣な表情で答える。
「王都だけでなく、地方も、もっと遠くの村も……命を守る力を広めたいです」
王女も微笑む。
「その意志は、きっと未来を変えるでしょう」
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夜、ユイは王都の城壁の上に立ち、星空を見上げた。
これまでの困難、悲しみ、葛藤……すべてが胸の奥で輝きとなっている。
(私は一人じゃない。リオンもいる、チームもいる、村人たちもいる……
知識を伝え、希望を育てることで、この世界は変えられる)
小さく握りしめた手には、確かな自信と決意があった。
そして、遠くの地平線には、新たな冒険と試練が待っていることを、ユイは薄く笑みながら感じていた。