王都への報告
村の小屋で夜が明けるころ、ユイはリオンと共に朝日の中を歩いていた。
村人たちの表情は明るく、子どもたちは笑顔で駆け回っている。
昨日までの絶望が嘘のようだ。
「……ユイ、あの村、見違えたな」
リオンが目を細める。
「君がいなかったら、あの子たちも……」
ユイは微笑む。
「でも、私一人じゃ何もできなかった。村の人たちが協力してくれたから」
胸の奥に誇らしさと、少しの寂しさが交じった。
その後、ユイは王都へ報告するため、リオンと共に馬車で都へ戻った。
王城の玉座の間に入ると、国王レオナルド三世が待っていた。
「ユイ……報告はどうだ?」
国王の目には期待と緊張が混じっている。
ユイは深呼吸して、村での出来事を順を追って説明した。
少年の回復、村人たちの協力、そして「清潔・隔離・看護」の徹底で被害が抑えられたこと。
国王は静かに頷いた。
「なるほど……これは、我が国の医療を変える大きな一歩になるかもしれないな」
セレスティア王女も微笑む。
「ユイ殿、あなたの知識と勇気に、私たちは助けられました。
ぜひ、王国全体に広めてほしい」
ユイは少し戸惑った。
「私……そんな大それたこと、できるでしょうか……?」
リオンが肩に手を置き、力強く言った。
「君ならできる。俺がついてる」
その言葉にユイは決意を固めた。
「……分かりました。できる限り、全力でやります!」
王都の空気は、まだ冷たく重い。
けれどユイの胸には、新しい希望の火が灯っていた。