信頼の芽
リオンの回復をきっかけに、ユイの元には村人が次々と訪れるようになった。
子どもの咳、老人の足の痛み、農作業でできた傷――。
「薬草もないのに、どうするつもりだ?」
そう訝しむ声もあった。
だが、ユイは一人ひとりに丁寧に対応し、包帯を巻き、清潔を保つ方法を教えた。
「いい? 手を洗うだけで病気は減らせるの。
それをみんなで守れば……村はもっと強くなれる」
最初は半信半疑だった村人たちも、やがてユイの言葉に耳を傾け始めた。
子どもの咳が軽くなり、老人の傷が癒えていくのを見て、次第に信頼が芽生えていったのだ。
そんなある日。
村の会議で、長老が口を開いた。
「ユイ殿……この村の医を担ってほしい」
その言葉に、村人たちの視線が一斉に集まる。
驚きと期待が入り混じった目。
ユイは少し迷ったが、リオンが隣で静かに頷いた。
「君ならできる。俺が支える」
胸の奥に広がる温かさに、ユイは大きく深呼吸をして答えた。
「……はい。私の力でよければ、村の命を守らせてください」
その瞬間、家の外に集まっていた子どもたちが歓声を上げた。
小さな手がユイの裾を掴み、笑顔でこう言った。
「ユイお姉ちゃん、ありがとう!」
その声に、ユイは心から微笑んだ。
(もう一人じゃない。
私の知識と、この世界の人たちの力で……未来を変えられる!)