町を変える光
事故から数日が経った。
工事現場での救護活動は町中の話題となり、診療所には連日、人が押し寄せていた。
「お願いします、あの時の処置を教えてください!」
「私も覚えたいんです!」
農民、兵士、主婦……立場を問わず、人々が明日香のもとへ集まる。
魔法に頼らない新しい治療法は、多くの人に衝撃を与えていた。
明日香は戸惑いながらも、木の板を黒板代わりにして講義を始める。
止血の方法、手の清潔を保つこと、患者を安心させる声かけ――
一つひとつの説明に、皆が真剣に耳を傾けた。
「すごい……こんなにわかりやすいなんて」
「これなら、俺たちでもできる!」
町に少しずつ、新しい光が灯っていく。
ただの病弱な少女だった明日香が、人々の未来を変え始めているのだ。
その夜、診療所の屋根の上で星を見上げながら、リオンが口を開いた。
「お前はすごいよ。たった一人で、この町を変えてる」
「……そんなことない。私は弱いし、体もすぐ壊れるし……」
否定する声に、リオンは真剣な眼差しを向けた。
「お前が弱いのは知ってる。だけど、その手で命を繋いでるのも事実だ」
「リオン……」
風に吹かれながら、二人は見つめ合う。
言葉は少なくても、胸の奥では確かなものが芽生え始めていた。
やがて明日香は、胸の奥で小さく誓う。
――この町を、もっと救いたい。
――この人と一緒に、未来を作っていきたい。
星の瞬きの下、彼女の想いは静かに強く輝き始めた。