ファーストコンタクト
翌日、入学式のため学園の用意した寮から学舎に向かう。
入寮は義務ではないらしいけど、私はタウンハウスから通うのはめんどくさいなと思ってしまって寮に入寮した。
お父様は、タウンハウスに住んでほしいらしいけど、寮に入るからこそ交友関係を拡げるチャンスに恵まれるのでさらっと無視させてもらった。
クラス表を確認して、クラスに行くとそのままカバンを置いて講堂に集合らしい。
講堂に向かう私の背後から肩を叩かれる。
振り返ると淡いオリーブの髪に綺麗なペリドットカラーの瞳を持った女の子がこちらを見上げていた。
この容姿に覚えがある。
彼女は…。
「ミリアム嬢…」
「私の事をご存じなんですか?」
「あっの…」
知らないわけがない。
だって、私の読んでいた小説のヒロインその人が今目の前にいるミリアム・ウィナー男爵令嬢なのだから。
ただ、今の私が知っているのはおかしな話でどう誤魔化そうか考えてると彼女の方が口を開いてくれた。
「ハンカチ、落とされましたよ」
彼女の手に握られてるのは、私のハンカチ。
「ありがとうございます。ユリ・サントスと申します」
「失礼しました。ミリアム・ウィナーです。同じAクラスですよね」
「そうですね。どうぞ仲良くしてください」
「私、近くの領地に年の近い方がいなくて、ユリ様が初めてのお友達です」
嬉しそうにハンカチを渡しながら私の手を取る彼女は小説で読んだとおり、純粋な印象の女の子だった。
「ユリ様ぁ」
後ろからトンっと衝撃を感じて振り返るとそこには幼馴染のマリーがいた。
彼女はわが領の隣の領地の子爵令嬢で私よりも数か月生まれが遅いからと私の事を姉のように慕ってくれている。
「マリー、令嬢としてこういう事をするのはよくないわよ」
「ごめんなさい」
「あと、ウィナー嬢にご挨拶をなさい」
私の背後からちらっと顔を出す。
「マリアンナ・スイフトです。どうぞよろしくお願いいたします」
「ミリアム・ウィナーです」
「マリーは私の隣の領地なの。令嬢らしくない所作をすることもありますが、私共々よろしくお願いしますね」
あまり立ち止まると迷惑になるので三人で講堂に向かって歩いていく。
主要人物と関わる予定はなかったけど、主人公くらいなら大丈夫だろうと話に花を咲かせながら歩いていた。