波乱の週明け
ミリアム様と街に出た翌週。
叔母からまた2人で来るようにと手紙が来た。
授業の間の休憩時間中にミリアム様にそのことを伝えると嬉しそうにぱぁっと表情を明るくする。
さすがヒロインといったところ。
護りたくなるような愛らしい表情に私も微笑んでしまう。
そのまま時間などを話していると急にミリアム様の表情が強張る。
「ユリ様、私もご一緒してもよろしいですか」
声がした方を振り返るとアイリーン様とその取り巻きの皆様。
私が、マリーやミリアム様と仲良くしているからかアイリーン様からの接触は初日以降なかったので驚いていると取り巻きの1人が私の事を見下げながら口の端を吊り上げる。
「アイリーン様がお声がけをしてくださっているんですよ。早く返事をしなさい」
派手なメイクの令嬢が声を荒げるが冷静に対応するためにすっと立ち上がり淑女の礼を取る。
「アイリーン様、本日もお日柄がよく。週末に私とミリアム様がノエル商会へ行くのにご同行くださるということですか」
取り巻きの手前丁寧にあいさつをすると、わなわなと震えながら取り巻きたちがこちらを見ている。
辺境の生まれだって王都での礼儀作法は知っているわよ。
馬鹿にしてくれちゃって嫌になる。
「えぇ。ノエル商会に以前お願いしていた小物を取りに行くのですが1人ではさみしいのでぜひお2人にもついてきていただけいたのです」
「仲のよろしいそちらのご令嬢たちはよろしいのですか」
私がそういうと少し困ったように眉尻を下げるアイリーン様になんとなく理由は察した。
利益を求めて近くにいるだけのハイエナ令嬢なのね。
アイリーン様が王太子妃になるのは、決まっていることでその地位は揺らがないと思っているけれど、本人がそう感じているかは別なのだろう。
「お2人とは先週出かけましたの。私はユリ様ともミリアム様ともマリアンヌ様とも仲良くしたく思ってますの」
この場にマリーが居たら喜んだだろうけど、彼女は本日風邪で休みだ。
なぜ、カップルは海に行くと波打ち際で追いかけっこをするのか一度誰か教えてほしい。
「畏まりました。ノエル商会副会長の叔母にも連絡をしておきます」
私がアイリーン様にそう伝えると満足そうにうなずいて取り巻きと去って行かれた。
ミリアム様の方を見ると圧倒されていたのか大きく息を吐いていた。
「大丈夫ですか」
「申し訳ありません。私、その…慣れていなくて」
「アイリーン様は本当は気さくな方だと思うんですけど、何かと柵が多いみたいですね」
「窮屈ですね」
「それでも、マナーや服装品で武装をするのが乙女ですわ」
「私…。そういうの苦手です」
「私もです。けど、やらないとただやられるだけの世界ですから」
やらないとやられる。これはわが母の教え。
こちらから攻撃は仕掛けないけどただやられると思わせるな。
そのためには、こちらができることを見せつけてやれ。
うちのお母様ってこう考えると武闘派だわ。
この日の夜。
アイリーン様付きのメイドからお茶会の招待状が届きぐったりすることになるとはこの時はまだ知らなかった。
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