私の事はほっといて
「ユリ様カフェにいきましょう」
「サントス伯爵令嬢、ウイナー男爵令嬢私もご一緒してもいいかい」
「ユリ嬢!俺と剣術の練習しようぜ」
「ユリさまぁ、マリーと遊んでくださいよぉ」
「えっと、皆様一気に言われましても」
なんで、なんでみんな私に絡んでくるの!!
私とあなたたちは何の関係もないただの同級生なはず。
だって私は原作に名前も出てこないモブにすらなれなかったキャラクターのはずよ。
「ユリさん、難しいお顔をされてどうされましたの?」
「ア・アイリーン様、…その」
「また殿下たちが困らせていたのね。あんな方々よりも私の次のお茶会でのドレスを相談聞いてくださる」
ダメだ、アイリーン様にガシッと腕を掴まれて放課後のサロンに連れていかれる。
その後ろを私に声をかけてくださった方たちが追いかけてくる。
ここは、私が途中までしか読んでいない小説の中。
そして、私はその小説に名前すら出てこない物語に関わらない立ち位置の人物。
なのに現実は、主人公やその周辺人物たちに友人認定されて、毎日絡まれている。
「さぁ、ユリさん。私に新しいドレスの構想を聞かせてくださいませ」
「アイリーンは本当に流行を生み出すことが好きだな」
「あら、アンドリュー殿下それは違いますわ。私は流行を生み出しているのはなくいいものを広めているだけですわ」
この学年で一番身分の高いアンドリュー皇太子殿下。
そして、その婚約者のアイリーン公爵令嬢が私の向かいに並んで座って楽しそうに談笑しているけど、私は未だにこの状況に慣れない。
「アイリーン嬢の話が終わったら今日こそ訓練に付き合ってくれよ」
「それって、身体を鍛えるものですの?」
「そうだ。あれをやってからパワーが上がった気がするんだよな」
「私も肌つやがよくなったでお付き合いしますわ」
「それはダメです!ユリ様は、私とカフェに行くんです」
「ミリー様、私も一緒に連れて行ってください」
私の右側にいるのは騎士団長のご子息でいらっしゃるレオン侯爵子息。
私の両隣には隣の領地のマリー子爵令嬢と読んでいた小説の主人公のミリアム男爵令嬢。
私の周りは今、小説の重要人物に囲まれている。
なぜこんなことになったのか。
それはきっと無意識に呼び起こされていた私の前世の記憶に由来するんだろう。
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