おみくティ
ある日
「新年から十分幸せになったから、これ、あげるね〜」
隣の上田さんからティッシュ箱を渡された。貧乏で有名な上田さんが宝石やら、高級そうな毛皮のコートを身に纏っていて、何かと聞けばこのティッシュのお陰だとか
「使い方は簡単なのよ、ティッシュを一枚取り出して、それで鼻をかむと番号に応じて何かが起こるの、番号の意味とかわからないけど、まぁ運次第よね」
「と、いうわけで、ママが居ない間にパパはコレでお金持ちになろうと思います」
「いや、父さんどういう訳だよ、やだな〜なんか」
「あれ〜?もしかしてタカシ怖いの?」
「じゃあ姉貴からやれよ」
流石は長女なのか、その手に迷いはなく、サッとティッシュを一枚摘み上げた。
「25?何かな」
鼻をかむと驚いた事に、打出の小槌みたくお金がティッシュの下からジャラジャラと出てきた。
「うおー!スゲー!次俺、俺やりたい!」
タカシは41、出てきたのは分厚い本だ。
「ハッハッハ!神様は良く見てるな」
俺も一枚引く、"790"という番号だ、さっそく鼻を噛むと、黒電話がガタンと重々しい音を立ててテーブルに落ちる。
するとその時だった、スマートフォンがメールを受信して画面がひかり、反射的に視線が奪われた。
「もしかして……」
スマートフォンのキーボード配列を見て、この番号の意味が分かった気がした。
そして、この790で黒電話が出た意味に、胃の底からヒヤリと冷たい何かを感じて額からは汗が流れる。
「黒電話とか初めて見た〜」
「受話器を取っちゃ駄目だ」
「え?なんで?」
息子が既に取ってしまっていた。
受話器からは地を這うような女性の低い声、それに楽しかった空気は一瞬にして殺された。
《もしもし、私メリー》
買い物に出て行っていた妻以外全員姿を消し、この出来事は事件として取り上げられたが、きっと永遠に解決されないだろう……
スマートフォンのキーボード配列を想像して欲しい。
25はカ行とナ行で金が出た、41、タ行とア行、知恵という意味で分厚い本。
ーー 790……つまり ーー