ウーサー=キングスと相談相手
目的を持って、ウサギたちを召喚するようになってから、ボクはある変化に気が付いた。
僕の持っているスキル本。
ウサキングの書に新たな項目が追加されていたのだ。
具体的に言えばこうだ。
ウサギ(給仕)
ノーマル以外にも、新たなウサギさんが誕生した。
単純にウサギさんたちが給仕のスキルを身に着けたというその解釈が正しいだろう。
大変分かりやすい可能性の形である。
ウサギは学習すると鍵かっこの中身が増える。
そしてここが重要だが、ウサギさんの成長は、スキルに成長に直結しているらしかった。
喫茶店を開いた日から明らかに、召喚できるウサギの数の伸びが増えていたからだ。
毎日一匹ずつ増えていた召喚上限は、二匹……場合によっては三匹と天井知らずである。
「……これはぜひとも活用したい」
そうすればひょっとすると近いうちにウサギさんで町を埋め尽くすことすら可能になるかもしれないのだから。
「……でもなにがいいだろう?」
ボクは楽しい夢をかなえるために考えた。
しかしそうすると、成長させるにはウサギたちに様々なことをやってもらわないといけないわけだが、それには多くの問題があった。
「……かわいいことは間違いない。けれど……役に立つかどうかは別問題だ」
なにか役立つスキルを学ばせようと適当な場所に連れて行っても果たしてウサギさんたちを受け入れてくれるだろうか?
残念ながらウサギさんは普通とは違うと言っても、やはりウサギさんである。
人間よりはるかに小さいし、見た目から役立たずと判断されるのは容易に想像がついた。
悩ましい。こんなにかわいいのに。
「キュ」
あ、今鳴いた。
今日はとてもいいことがありそうだ。
悩みながらウサギさんの毛並みをムニムニ堪能していると、不思議と心が落ち着いてくる。
そしてウサギさんの効果でボクの頭は活性化して、閃きが一つ降りて来た。
「……これはコネを使うしかない」
ボクの頼みを、少しの不便を許容して許してくれるような、そんなコネだ。
確実に役立つとは断言できないのだから人選は難しいが、ボクには一つ心当たりがあった。
「ふむ……なんだね?」
「……相談に乗ってください」
毎朝開店時間にやって来る、ウサギの喫茶店の常連さん。
暗黒騎士ザインさんに、白羽の居矢を立てた。
ウーサー=キングス。冒険者相手に冒険する、挑戦の一幕である。




