ウーサー=キングス神様と会う
玉座に触れた瞬間、視界が切り替わる。
「……んあ!」
恐る恐るボクはとっさに閉じてしまった瞼を開けると、そこはダンジョン内部ですらなかった。
「……一体何が?」
ただただ真っ白な場所で、不思議と恐れ多く畏怖するような感情が沸いてくる。
でも引き返す気にはならずに、ボクはそこで待っていた彼女に会った。
身がすくむほどに美しい少女はなぜかボクのウサギさんを胸に抱いていた。
これは……どう反応するのが正解なのだろうか?
こんなダンジョンの奥深くに、ウサギさんのファンガールが?
頭の中で疑問がグルグルと回っているボクに、少女は話しかけて来た。
「こんにちは。地上の貴方。ずっとお話したいと思っていたの」
口も開いていないのに少女の声は頭に響く。
不思議な体験だが、嫌な感じはしない。
むしろ伝わってくるのはとても温かい感謝の気持ちで、戸惑いは加速する。
「……あなたは?」
「私はあなたのギフトを送った者です。大事にしてくれてありがとう」
「!!!」
それはなんというか……神様ということだろうか?
突拍子もない話だが、彼女を目の前にすると不思議と全く嘘だとも思えない。
ひとまず何もわからないなりに丸っと飲み込んで、神様だと言うのなら、ボクは一度聞いてみたいことがあった。
「……なぜボクにこのギフトをくれたんですか?」
なぜボクがこの素晴らしいギフトに選ばれたのか?
そんな理由があるのなら、聞いてみたかった。
しかし神様の答えは、実にシンプルなものであった。
「それはあなたがウサギが好きだから。どうせならウサギ好きな人にあげたかったの」
「……神様もウサギさんが好きなんですね」
「もちろんです。生命の神が作ったモノの中で一番好き。だけど好きだからこそ……もっとこう……口を出したいところもあって。そのウサギさんと、うさキングの書を作ったの。あなたは思った以上にギフトを大好きになってくれて私はとてもうれしかったわ」
うん……どうやら趣味が高じて誕生したギフトだったようだ。
でもボクは他ならぬ神様からのお言葉に、その場に崩れ落ちそうになる。
それは紛れもなくとても大きな歓喜ゆえだ。
今まで大切にしてきた気持ちだからこそ認められると感動もひとしおだった。
「……はい、貴女の与えてくれたウサギさんは最高です」
心から絶賛すると、神様のむふーっと荒い鼻息と、とても得意げな気配がした。
「そうでしょう。そうでしょう。私の目に狂いはなかった。では、このダンジョンを踏破した褒美を与えます。このダンジョンは私が作り出した特別な物。あなたに試練を与え、そして力を与えるものです」
「力ですか?」
「そうです。うさキングの書はばーじょんあっぷし、あなたは城を手に入れるでしょう。……本当はすぐプレゼントしたいくらいだったけれど……子供たちに止められてしまったの」
「……そうなのですか?」
「そうなのです。ごめんなさいね?」
というか今なんと?
神様相手に質問攻めにはできなかったが、理解できないことも多く、ダクッと謎の汗は沢山掻いた。
天界には様々な神々が沢山おられて、ギフトはそんな彼らがボクら人間に与えてくださるのだと言われている。
ボクの知っている有名な神様の名前と言えば、大地神アーヴィス様、生命神バナーヴァ様、天空神クリア様は信仰する人がとても多く、有名だった。
そして彼らを生み出したとされる最高神ウルティマ様くらいビックネームならボクがというか小さな子供でも知っている。
でもボクは大きな恩のある大切な神様の名前を知らない事を、とても心苦しく感じた。
ボクはしかし、彼女の事はまるで分らないけれどウサギが大好きで素敵な神様なのは間違いないなと尊敬の念を強く感していた。
だからボクは、人生の感謝を沢山込めてせめて名前を尋ねた。
「あなたに最高の感謝を……最後に神様のお名前を教えていただいてもよろしいですか?」
「―――私の名は最高神ウルティマ。この世界を創造した者」
「……!?!?!?!?」
なんか……思ったよりもずっととんでもない神様だった……。
ウサギの神様かと思ったんだけどまさか最高神―――このウーサー=キングスうっかり変なこと言わないでよかったと心の底からホッとした瞬間、視界は再び白く包まれた。




