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ウーサー=キングスと天国と地獄

「……ああ、地獄のようだ」


 ボクは進むごとに深まる絶望に押し潰されそうだ。


 天国のようなところだと思ったのに……いざ入り込んでみると城の中では、ウサギさん達に敵意を向けられ、襲い掛かって来たウサギさんは倒さなければならない。


 考えてみれば当たり前のことだが、実際やるとなるとダメージがすごい。


 直接手を下すわけでもないのに身を引き裂かれるような思いである。


「意気込んで来たんだからさっそくしょげないの!」


「で、でも……これウサギさんやっつけるの精神が削れますね」


「まぁ、それは確かに」


「いやでも、ダンジョン攻略の糸口はつかめたよ!これなら今回のアタックはかなり深くまで行けそうだよね!」


 ドヨンとした空気を払うようにトトさんがは努めて言う。


「でも、魔法を使ったり剣を使ったり、攻撃手段が多彩なのが地味にきついね」


 完全にウサギさんをモンスターと割り切ったトトさんの言葉通り、確かにここにいるウサギさん達のスタイルは多彩だった。


「それは思った、剣も槍もうまい。アレはモンスターを相手にしているっていうよりも……」


「そ、そうですね。まるで人間を相手にしているみたいなうまさがあります」


「……そんなにおかしなことなんですか?」


 ボクが尋ねると、トトさんが頷いた。


「うん。人間っぽいと感じるモンスターはなかなか。やりにくいって感じる奴は珍しいね」


「……というと?」


「うーん。感覚的に言うと避けたり、逃げたりが異様にうまくて、一回の戦闘に時間がかかる」


「……なるほど」


 言われてみると、確かにボアやスライムよりも力や耐久力は確実に劣っているのに、やっつけるのに時間がかかっていた気がする。


 ウサギさん達がそう言う立ち回りをするのは当たり前だと思っていたが、相手がやられて嫌なことをするというのはなるほど、人間っぽくて戦いづらいことだろう。


「……じゃあ。他にはどんなことをやられたらいやですか?」


 興味本位でそう尋ねるボクにトトは困り顔で答えた。


「うーん。この上連携までされると厄介かな?」


 ああ、確かにそれはますます手こずりそうだ。


 格上を相手にする時、徒党を組むのは有効だろう。


 わらわらと出て来て、冒険者のパーティのように役割分担なんてされたら―――とても面倒くさいことこの上ない。


「……ねぇ、なんかいっぱい出てきてるけど」


「こ、これってやっぱり、そう言うことですかね?」


「ああ、確かにこういうの嫌だね」


 まずは後衛の魔法と弓から。


 遠距離攻撃で攪乱して、こちらの陣形が崩れたところを武器持ちが切り込んで、仕留めるつもりだ!


 やりたいことは一目見れば明らかだった。


 ボクはごくりと喉を鳴らし祈りをささげた。


 何で祈ったのかって? そんなことは決まっている。


 彼らの技量がボクの知っているウサギさんと全く同じものなら、徒党を組んだところで結果は知れているのだから。


「やらせないよ」


 ヒュオッと風の切る音かと思えば、矢と炎が切れた。


 剣って矢はともかく炎なんて切れるものだったのかな?と思ったが、実際切れているんだから仕方がない。


 攻撃魔法が切られたのなら、攪乱されることもなく。


 逆に奇襲が失敗し、意表をつければ、こちらにも遠距離攻撃と決め手はバッチリある。


「い、行きます!」


「個別だろうと集団だろうと勝てない相手じゃない!」


 ついでに言うなら数の暴力すら、ボクらの方が上回っていることだろう。


「……弓兵、構えて出鼻をくじいて。後は援護」


 ボクはウサギさんを召喚する。うさキングの書には、様々なウサギさん達のストックは十分すぎるほどにある。


 唯一ボクに出来る後方支援はモンスターウサギさんの強みとたぶん全く同じだった。


 ウーサー=キングスはウサギさんを誰よりも良く知っている。


 その上、ウサギさん達は勇者パーティに比べたら強くない。


 例え集団で襲われようと殲滅までそう時間はかからなかった。


 なぜだか―――――とても、とても微妙な気持ちだが、彼女達の実力ならこの先に進むことは難しくないだろう。


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