ウーサー=キングスは夢を語る
「ねぇ! あなたのウサギ触らせて!」
「……どうぞ」
「ホント!」
モフモフをモフモフする女の子は両親が冒険者だと言う人間のサリアさん。
赤毛がチャーミングな彼女は腕っぷしが強く、快活な彼女は町の女の子たちのリーダー的な存在だった。
そんな彼女の将来の目標はパーティを作って冒険の旅に出ることだという、ご近所屈指の武闘派である。
そして助けてくれた女の子の一人である彼女にお礼も込めて、ボクは召還を繰り返す。
「わわわ……沢山だせるの!?」
「……出せるよ」
より癒し効果を高めた、モコモコウサギたちの可愛さは抜群のようだった。
やはりこの可愛いは、ボクだけではないようである。
そして反応を見るに女の子にはなかなか受けがいいらしい。
いや、潜在的には男の子も気に入ってくれるはずである。
そう言う意味では先ほど話しかけてきた男の子もウサギが気になっていたのかもしれない。
つまり可愛いは万人に通用する可能性があると言うことか。
「……ちなみに君もなにかギフトを?」
「え? うん。剣聖のギフトを貰えたよ」
うんバリバリ戦闘向きだ。
しかも剣聖とは、言葉の響きがもう強そうだ。
これは男女含めて、子供内ヒエラルキーの上位は彼女の物のようだった。
是非今後ともごひいきにしてもらいたい。
僕は無言でウサギを追加した。
「うわー♪ かわいい~♪」
よし嬉しそうだ。
いい仕事をしたと内心自画自賛していると、サリアさんはなぜかボクの顔をじっと見ていた。
「……なにか?」
「君もギフト貰えたんだよね? 何か夢とかあるの?」
なんとなくというよりは、どこか期待している、そんな口調だったと思う。
「その……冒険者になったりとか」
普段から夢を口に出している彼女だからこそ、同じくギフトを貰ったボクが夢を持っているのか気になったんだろう。
ならば期待に応えるとしよう。
ボクの夢は、隠すようなものでもなければ、恥ずかしい物でもない。
「……冒険者じゃないけれど。あるよ」
「ホント?」
「……うん。ボクはギフトのウサギをどんどん増やしてウサギの王国を作りたいんだ」
わんさかウサギが住んでいる、ウサギのための王国である。
出来れば将来、湖の畔にウサギキャッスルを建ててウサギたちと幸せに暮らすのである。
元々ウサギは好きだったがギフトを貰った今では神がそうしろと言ったようなもの。
ならばボクはその使命を全うせねばならない。
断言したボクに、サリアちゃんはぽかんとした顔をしていたがアハハと声を上げて笑った。
「変なの! でも面白い夢だね!」
「……」
ボクはとりあえずウサギを召喚する。
「ウサギだ!」
なんということもないが、ちょっとした照れ隠しである。
しかし口に出してみると、頭の中がずいぶんクリアになった気がした。
ウサギの王国を作る。確かになかなかどうして馬鹿みたいな夢だった。
今のボクにはそうできることはい多くないけれど、ウサギ王国実現のための道はギフトの中にある気がする。
それは女の子がウサギでモフッている笑顔を見れば自ずと明らかな―――気がする。
その時、ボクの商人としての血が、カッと騒いだ。
これはいけるのでは? そして思い付きを実行するためには少々下準備が必要だ。
ウーサー=キングス。野望を胸に夢を語ったとある一日の話である。