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ウーサー=キングスと(あまり知られていない)暗黒騎士の秘密

 仮称”ウサギのダンジョン”は突然現れたらしい。


 一番最初にその存在を認識したのは、神々の声を聴くギフトを持つ”巫女”だと言う。


 新しいダンジョン発生の知らせは、すぐに、しかし秘密裏に冒険者ギルドに出回った。


 今回はダンジョンの調査は勇者に命じられ、冒険者ギルドはそのサポートをするという方針である。


 勇者トトは、国王の印の入った命令書をボクらに見せてぺこりと頭を下げた。


「では改めてよろしくお願いします」


 今回の探索メンバーに選ばれたのがここにいる剣聖サリアちゃんと、大魔導士リーナさんの二人のようである。


 しかし神々のご指名ともなれば光栄なことなんじゃないかとボクなんかは思うのだけれど、サリアちゃんはその点はどうにも胡散臭そうだった。


「ここ最近町の近くで新しいダンジョンが発生したのは軽く聞いてる。アナタも実力はバッチリってことよね?」


「はい」


「ならこっちとしては好都合。元からやる気はあったし……これもウサギの導きかな?」


「ウサギの導き?」


「まぁ……こっちの話」


「そうですか?」


 トトさんは釈然としない様子で自分のウサギさんを見ていたけれど、すぐにサリアちゃんに笑いかけた。


「とにかくよろしくお願いします。心強いです」


 かなりあっさりと話がまとまってボク、ご満悦である。


 サリアちゃんもリーナさんも、他とは組みたがらないと有名だから心配していたのだけれど、仲良く出来そうで良かった。


 これもウサギさんの効果だとボクはちょっとカヤの外でメロンソーダをごくごく飲んだ。


 そしてズズズッとストローがメロンソーダも空だと訴える頃、どこからともなく店員の彼はやってきて、ケーキをコトリとボクらのテーブルに置いた。


 ボクが顔を上げると、そこには見知った顔がにっこり笑っていた。


「新パーティーの結成おめでとうございます。こちらサービスです」


 おお、さすがザインさん。パーティー結成は冒険者の重大事だものね。


 友人への心憎い心遣いに、店長もニッコリだ。


「……ありがとうございます。うれしいです」


「すみません勝手に。しかし彼女達は同じギルドの後輩ですから」


「……いえいえ。ボクもお祝いしたい気分だったので」


 ボクは大変満足したが、しかしトトさんはともかく顔見知りのはずのサリアちゃんとリーナさんも同時にうちの店員さんの顔を見て困惑しているのはどういうことだろう。


 ボク達がきょとんとしていると、彼女たちは同時に口を開いた。


「「誰?」」


「……暗黒騎士のザインさんです。家で最近店員をやってくれてるんです」


「!あの暗黒騎士!?」


「か、顔……初めて見たかも」


 それはさすがにヒドクない? ああでも、いつも顔は見せていなかったかも?


 ザインさんはかわいそうだが、そう言えばボクもたまに、顔に違和感を覚えることは心の中にしまっておいた。

 

 応援してくれると言うのならそれは素直にうれしい。


 ならばこのウーサー=キングスの名に懸けて、全力を尽くす所存。


 密かに決意を固め、ケーキを頬張るティータイムである。まぁおかわりはメロンソーダだけど。


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