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ウーサー=キングスは幼馴染と出会う

 我が町の高位冒険者サリア、リーナコンビはウサギさん喫茶の常連である。


 町に戻って来た二人は、休憩もかねて店に寄ってくれたみたいだが、タイミングは絶妙だった。


 ひょっとするとボクは歴史的な瞬間に立ち会っているのかもしれない。


 と―――一瞬思ったりしたけれども、それはともかく目の前の三人のうち二人は昔からの幼馴染なので感動はそれなりである。


 そして今、後からやって来た二人と、ボクと勇者トトさんは同じテーブルに座っていた。


「初めまして。私はサリア。この町で冒険者をやっているの。こっちはリーナ。大魔導士のギフトを持ってるうちの後衛ね」


「ど、どうも……」


 サリアちゃんはにこやかに応じていて、剣聖にふさわしい態度を獲得しつつある。


 傍らのウサギさんを撫でているから若干マイルドに見えるが、それでもカッコイイ立派な剣士に成長していた。


 その横でカラフルなローブを着たウサギさん達囲まれているのは大魔導士のリーナさん。


 引っ込み思案な彼女の性格は大きく変わってはいないものの、サリアちゃんとはうまくやっているらしい。


 少なくとも冒険者としての名声を聞いていれば、それは間違いなさそうである。


 ウサギさん達の成長も著しく、ボクとしては嬉しい限りだ。


 そして町の外からやって来た勇者様にも、彼女達の名前は届いていたようだった。


「会えて光栄です! 私の名前はトト。勇者のギフトを持ってるんだ」


「「勇者?」」


 ただ……勇者はレアなギフトである。


 友人たちは聞き覚えがなかったらしく首をかしげていて、トトさんの背中からシュンと音が聞こえた気がした。


「いやははは……そういうギフトがあるんだ。戦闘向けのやつなんだけど」


「「へー。知らなかった」」


「……」


 ああ、幼馴染たちに容赦がない。


 トトさんがもっとシュンとしている。


 彼女達の自己紹介をハラハラ聞きながら、ボクはジャンボメロンソーダを啜って気分を落ち着けた。


 甘いものは実にいい、心に栄養が満たされる。


「そう勇者です。まぁ……私自身もよくわかんないんだけどね。それよりも君達に仕事を頼みたいんだ。私と一緒にあるダンジョンに行って欲しいんだけど」


 トトさんは一つ大きな咳払いをして、話を仕切り直す。


 切り出されたサリアちゃんとリーナは顔を見合わせすぐにトトさんに向き直った。


 ただ、ここでボクはちょっと引っかかった。


 なぜならば、話を聞いたサリアちゃんは何か企んでいるのが透けて見える顔をしていたからだ。


 何を言うつもりだろうとボクも首をかしげていると、サリアちゃんは妙にもったいぶって口を開いた。


「……ねぇトトさん? 私はその話、受けてもいいよ」


「え? いいの?」


「もちろん。その代わり条件があるんだけど?」


「は、はい! もちろん報酬は十分に……」


「当然報酬はもらうけどそうじゃなくって―――ウーサーを一緒に連れて行くこと。それなら受けてもいい」


「え? ボク?」


 完全に蚊帳の外だと思っていたところにボクの名前が出て来て驚いていると、サリアちゃんはニヤリと笑ってボクを見た。


「噂のウサギダンジョンでしょ? 行きたいよね?」


 さも当然のように聞き返されて、ボクは黙った。


 というか完全に見透かされていたようで、恥ずかしい。


 新しいダンジョンの事はサリアちゃんの方が知っているだろうから、ボクは観念して素直に白状した。


「……すごく行きたいです」


「了解。この剣聖に任せなさい」


 どんと胸を叩き、とても嬉しそうなサリアちゃんだが、戸惑ったのはトトさんだった。


「ええっと……危険だとは思うけど、それでも?」


「それでもだよ。断るんならこの話はなしで」


 だが強気に言い返すサリアちゃんが引くつもりはないのだとわかると、トトさんは軽くため息を吐いて首を縦に振った。


「……わかりました。彼に同行してもらうことにしましょう」


 おおこれは心強い。


 どうやらこのボク、ウーサー=キングスは噂のウサギダンジョンへの同行を許されたようだった。


お久しぶりです。ずいぶん間が開いて申し訳ない。

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