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ウーサー=キングスと勇者のウサギ

 ボクは尋ねてきた女の子を、店内に案内する。


 ウサギさんの力で繁盛したお店は、今では町ではお馴染みのスポットになっていると自負していた。


「……ここはうさキングダム一号店、ウサギさんを貸し出すお店です。あなたの旅のお供にいかがですか?」


「是非お願いします!」


 ほとんど即答とは、この子中々ウサギ力が高い。


 ならばとボクはギフトの産物、“うさキングの書”に手をかざし、女の子の顔を見た。


 ウサギ達の活躍目覚ましい最近では、当然ギフトの成長も著しい。


 ウサギさん達の種類も増え、ギフトによる特別な力も生まれた。


 本当は常連さんにだけ披露するとっておきだけれど、助けてくれた恩人ならば構うまい。


 こうして書を持ち、相手の顔を見ることで最適なウサギさんが新たに生み出される。


 お客さんの相棒となる、分身。


 かつては教えなければ学べなかったものが、手にしたその瞬間からギフトレベル一として芽吹く奇跡の贈り物である。


 では―――この子に最適なウサギさんはどんな子だろう?


 すべては出て来てからのお楽しみだった。


「……貴女の運命のウサギさんを召喚します」


 いつもは書が開き、中に記されている文字が光って召喚される流れなのだが……今回はどういうわけか、少しだけいつもと違っていた。


「……え?」


「うわぁ……」


 うさキングの書がぼんやり光る。


 そして自動で開いたページは空白だった。


 しかしなにも起こらない訳じゃない。


 空白のページは新たな文字が浮かび上がって、ふわりとはがれて飛んで行く。


 飛んで行った文字は、女の子の元まで飛んで行くと、ボカンと煙を吹いて爆発した。


「ウッウー♪」


 煙の中から飛び出した、ウサギさんはぴょこんと跳ねて高らかに鳴く。


「「うぁ! ウサギさんが鳴いた!?」」


 声をそろえて驚くボクらに、新しいウサギさんは「ウー?」とやっぱり鳴きながら小首をかしげていた。


 いつもと違うけど、デンジャラスな可愛さだ。


 タレ気味の羽根のような耳もよい。


 全身の花のようにも見える黒い幾何学模様もキュートである。


 そして真っ白というスタンダードな姿ながら、毛の艶といい気品といい、ただウサギさんではないと数々のウサギさんを見定めて来たボクにはわかった。


「……君は一体何者なんだろう?」


 そう尋ねると、出てきたウサギさんを両腕で大切そうに抱きかかえ、目を輝かせていた女の子は、こう名乗った。


「はい! 私は トト! 神様から勇者のギフトをいただいた冒険者です!」


 ウーサー=キングス勇者に出会って、贈り物までしてしまった一幕はあまりにも突然にやって来た。


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