ウーサー=キングスは心の光と闇を知る
「……」
ボクはウサギを一匹抱え、街中で日課の散歩をしていた。
常時ウサギを呼び出していると、一日一匹は呼び出せる数が増えていて、日々精進する毎日だった。
スキルについては今のところ不満は何もないのだけど、唯一このギフトを授かったことで一つの懸念がボクにはあった。
町の外にはモンスターが沢山いるらしい。
そしてギフトはそんなモンスター達と戦うために重宝されているのだと聞いている。
つまり戦闘に使えるギフトこそ優れたスキルだと世間一般では言われているわけだ。
ひょっとするとこういう場合、定番のイベントが起こるかもしれない―――
「おい、お前だろ? 変なギフトを授かったっていうやつ? ウサキング(笑)だっけ?」
そんな風に思っていたら来ちゃったよ。
……まさかとは思ったが、こういうこともあるのではないかと思っていた緊急事態だった。
「……」
さてどうしたものか? ボクは正直とても弱い。
目の前の体の大きな子供は、ボクより強いのは間違いなさそうだった。
「なんだよ? なんか言えよ? そのウサギ……お前のスキルで出したのかよ?」
「……撫でますか?」
「え? なんでだよ?」
この上なく素晴らしい提案だと思ったのだが、まさか拒否されるとは。
ウサギを撫でたい衝動に理由が必要とは思わなかった。
混乱しているボクにいじめっこの手が伸びる。
さっさと逃げるべきだろうと思っていたのだけれど、ウサギが掴まえられてボクは逃げ時を逸した。
うーん困ったぞ?
普通にピンチだ。
どうしたものかと思っていると、影が複数飛び出してきてボクと彼の間に割って入った。
「へ?」
「なにウサちゃんに乱暴してるんだコラ!」
「ふざけんじゃないわよ!」
「いや! オレは……ギャアアアアア!」
「……」
タコ殴りにされる、名前も知らない彼がなんだか気の毒に思えてくるほどの圧倒的な暴力であった。
ボクを助けてくれたのは、町の女の子達のようだ。
話を聞くと、ウサギがかわいいから助けてくれたらしい。
おかしいと言う人もいれば、気に入ってくれる人もいる。
助かったけれど、ちょっとした好奇心でつい泣いて逃げ出す目に合い、町の女の子たちにこの先目の敵にされるであろう彼を思うと切なさも感じた。
しかしまぁ、助けてもらったお礼は必要である。
「……良かったら撫でますか?」
「「いいの!!」」
可愛いとは罪深いものだなと思う。ウーサー=キングス人の光と闇を知る学びのひと時であった。




