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ウーサーキングスの敗北

 本来このオオカミのモンスター『ダイアーウルフ』は、鍛え抜かれた冒険者がパーティを組んで挑む恐ろしい存在だ。


 今までのウサギさん達では、本来足元にも及ばないだろう。


 でもこれで、ウサギさん達は一つ進化する。


 齧る。


 齧る。


 ニンジンを齧る。


 制限時間はあるけれど、こちらは百を超えるウサギさんの兵団である。


「……一斉攻撃!」


 ウサギさん達は、ボクの号令で飛び出した。


 出現させた黒い穴に飛び込んで、頭上から降り注ぐウサギさん達に容赦などない。


 金属化している影響で、落下の音も重さが違った。


 先ほどまでとは桁違いの想い斬撃が、オオカミに襲い掛かる。


 ズラリと並んだ魔法使いウサギさん達の魔法攻撃は、魔法使いの魔法とそん色ない。


「……頑張れ!」


 武器を付きだし、ほぼ捨て身で攻める。


 小さなものが大きなものに勝つにはどうすればいいか?


 それこそ卑怯に徹するか……そうでなければ協力して倒すしかない。


「ウオンンンンン!!!!」


 しかしダイアーウルフは全身が怯えて竦むような咆哮を叩きつけてきて、ウサギさん達は一瞬動きを止めてしまった。


 オオカミ型モンスターの咆哮は、時に敵をひるませる。


 ボク自身も全身にしびれを感じたが、全く怯んでいないウサギさん達がいた。


 彼らは3人1組で生き物のように動く。


 ダイアーウルフも動きが違うウサギ達に注目し、前足を振り上げたが、その一撃を大盾を持った重騎士ウサギさんは受けきった。


 手のひらに収まるほどのウサギさんが、潰れないことにダイアーウルフは衝撃を受ける。


 ほんの一瞬の驚きは確実な隙になって、襲い掛かる戦士ウサギに足を切り裂かれた。


 足は移動の要である。


 ダメージで顔をしかめ、注意を引いたところで魔法使いウサギの火球がオオカミの顔面に大炸裂した。


 その魔法の炎は中々消えずに、オオカミの呼吸を封じる。


「……!」


 ダイアーウルフが焦って頭を低くし、地面にこすりつけたタイミングは待ちに待った瞬間だった。


 暗黒騎士のオーラを纏ったウサギさんはその一瞬を見のがさず、見事にその刃をオオカミに命中させた。


 闇色オーラがダイアーウルフの頭を深く傷つけるのを僕は確かにこの目で見た。


「……よし!」


 今できる最高の連携なのは間違いなかった。


 大きなダメージを与えたが―――しかし、待ち望んだ勝利の結果は訪れない。


 ダイアーウルフが自らに手傷を与えた獲物を敵と認めたのを、僕は確かに感じ取っていた。


 僕は慌てて指示を出す。


「―――逃げ」


 しかし咄嗟の命令は、圧倒的暴力で拒否された。


「……!!」


 体を震わせるだけで、飛んでいくウサギさん達。


 なにか爆発したような衝撃が、ウサギさんの巣穴を丸ごと吹き飛ばした。


 ダイアーウルフが魔法のようなものを使ったのは間違いない。


 元居たダンジョンに風景が戻り、ボクも一緒に飛ばされて転がると、こちらに視線を向けるダイアーウルフを見た。


 のしのしとこちらに近づいてくるダイア―ウルフは、いつ飛び掛かってきてもおかしくはなかった。


 さて困った。これは死んだかもしれない。


 そう考えはしたが、驚いたことにボクの心は死の恐怖以外の感情に支配されていた。


「……」


 それは激しい怒りである。


 スライムの時も今回も、やはりウサギさんがやられるというのは許しがたい。


 そして倒れたウサギさんを踏み潰されでもしたら……それはもう頭に血が上る。


 ボクは地面に落としたうさキングの書に手を伸ばす。


 頭はズキズキするし、血も出ているようだが今はどうでもよかった。


 精神の続く限りウサギさん達を召喚しようと企むボクだったが、手にしたうさキングの書に新たな項目が現れていることに気が付いた。


「……迷宮のウサギ?」


 今まさに焦げ跡のように刻まれた一文はそれだけだ。


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