ウーサー=キングスと落とし穴の奇跡
「……これはまずい」
ボクは暗闇の中に落ちてゆく。
そして落とし穴はずいぶんと深いようで、一向に底につく気配がなかった。
というか底が見えた瞬間死んじゃう。
由々しき事態である。
このピンチをどうにかするにはギフトの力を使うしかないが……ウサギさんで何が出来ると言うのか。
その瞬間ボクの頭にウサギスタンプの様なひらめきがポンと浮かんだ。
「……ウサギさん大量召喚!」
いやウサギさんを信じる限り、その可能性は無限大だ。
暗闇の浮遊感の中ボクは一心不乱にウサギさんを召喚した。
そして出てきたウサギさん達はボクの真下に集まって、ボカンと特大の煙に包まれた。
煙については完全に予定外。
視界が煙で覆われる中、唐突に浮遊感が終わったと思ったら、ポヨンと床に跳ね返され、ボクは何何かに受け止めてもらえたみたいだった。
「……助かった。ありがとう」
デデンと僕を受け止めたのは、とんでもなく大きく、そしてほぼ球体というほどに丸っこいジャンボウサギさんである。
「……ウサギさん達が融合して一つに……!」
その神秘の合体をボクはデブウサギさん召喚と名付けよう。
あ、デブって言っちゃった。
ゴロンと転がったデブウサギさんの奇跡は長く続かず、再びボカンと煙に包まれれ元のサイズのウサギさんに戻るとボクの前に集合した。
「……やっぱり神秘的な生き物だウサギさん。かわいい」
気になることは沢山あるけど、かわいいので良しとしておこう。
そして生き残ったのはいいものの、まだまだピンチは続いていた。
「……ここで待っていた方がいいかな?」
あの穴の深さからいっても。相当下の階層に落ちたのは間違いない。
ここが安全なようなら救助が来るまで待つのが正解だと思うのだけれど……クッションになってくれたウサギさんは素早く散会して、ボクを守る様に配置についていた。
その反応は何かを警戒しているようで、ボクも冷や汗を掻いた。
ウサギさんを通じて緊張が伝わって来る。
ボクは沢山のウサギさんを召喚して毛玉を作ったけれども、まさかこんなにも近くにもう一つ大きな毛玉があるなんて全く予想していなかった。
毛玉はのそりと動く。
その姿は驚くほどに大きな、オオカミの形をしていた。
「……これはまた成長しなきゃだ」
その瞬間ボクは、ああ、これは今回のウーサー=キングスの冒険で最大の山場になると確信した。