ウーサー=キングスの失態
ボクは後ろから見ていたが、贔屓目なしで見てもこのパーティは強すぎた。
子どもとか、たぶんそんなことは関係ないくらいにモンスターが相手にならないのだ。
低層とはいえダンジョンのモンスターは強いはずなのに、サリアちゃんなんて疲労は軽い運動程度に見えた。
「君もお疲れ様。どう? ギフトの方は?」
休憩中にサリアちゃんにそう聞かれ、ボクはうさキングの書を確認する。
するともうすでに召喚できるウサギの数が増えていて、ボクは頷いた。
「……成長してる」
「ほ、本当ですか?」
「……リーナは?」
「……私も、たぶんだけどいつもより魔法をもっと撃てそうです、これが成長なんですかね? ウーサー君よりわかりにくいですけど」
「戦士のギフトよりは魔法使いは分かりやすいって聞くけどな。初めてダンジョンに入るなら、絶対成長してるよ。気になるなら冒険者ギルドで能力を見るギフトを持っている人がいるから、見てもらうといいよ」
「そ、そんな人いるんだ。わかりました頼んでみます!」
「うん。それにしても、ウーサーは成長が早いなぁ。そのうち町がウサギだらけになっちゃうんじゃない?」
冗談めかして言うサリアちゃんだったが、それは目標の一つである。
「……それは、かわいくていいよね」
「「確かに」」
さすがウサギさんの導きで知り合った同志。話が分かる。
この辺り共通認識としてあるから、彼女達は信用できる。
だからこそボクは少し調子に乗ってしまったのかもしれない。
「……もう少し頑張りたい。いい?」
「もちろん! このパーティーすごくいいよ!」
「は、はい! もっと深くだって潜れそうです」
余りの好調ぶりにパーティーの士気は高かった。
お互いに頷きあい、ダンジョン探索を続けることになる。
そして、あまりにも高いウサギさんの索敵能力を駆使することで、ボク達はとある階層の奥にある発見をした。
「……この先に隠し部屋があるみたい」
「え? この階層に隠し部屋なんてあったかな?」
「も、もしかして初発見の部屋ですか? それってすごくありません?」
ウサギさん達の案内でやって来たその場所はただの壁のように見えた。
しかしウサギさんの一匹が、壁の一部をテシテシとしきりに叩いていた。
「……ここを押す?」
指示に従ってみる。
すると扉が床に引っ込んで新たな部屋が現れた。
奥には宝箱があり、開いているようには見えなかった。
「「「おおー」」」
ボクらは歓声を上げた。
友人と危険に飛び込み、大人でも見つけられないような財宝を発見する。
それはまさに―――冒険そのものだった。
「宝箱だ!……すぐに取りに行こう!」
「……待って。先にウサギさんに見てもらおう」
「! わかった!」
「ええ!……かわいそうじゃないですか?」
リーナさんが言うことには激しく同意したいけれど、間違いなくここはボクのウサギさんが適任である。
その辺り、ボクと非常事態を乗り越えたサリアちゃんにはわかったようだった。
「いや、ウーサーのウサギはダメージを受けると消えちゃうだけでまた呼び出せるんだ」
「そ、そうだったんですか!?」
まぁボクがいればという前提があるからこそできる荒業だけど、おおむねその通りだ。
ぴょんぴょん跳ねて行ったウサギさんは普通に真っすぐ宝箱までたどり着く。
そして宝箱に手をかけると、普通に開けた。
「「「あ」」」
簡単に開いてしまった宝箱には金色の輝きが見えた。
「……中身があるみたいだ」
「やった!」
「やりましたね! 大儲けです!」
喜ぶサリアちゃんとリーナさんの反応に、ボクも満足である。
そして罠を確かめてくれたウサギさんをねぎらおうと部屋の中に足を踏み入れ、真ん中に差し掛かった瞬間―――真下の床がなくなった。
「……?」
「!ウーサー!」
あー……
うさぎさんじゃ重さが足りなかったかな?
サリアちゃんの叫び声が聞こえたが、ボクは真っ逆さまに闇の中に落ちて行った。




